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2026年4月

電力貯蔵用の鉄-空気電池の進展

電力貯蔵用の鉄-空気電池(Iron-Air Battery)については、米国の新興企業 Form Energy が、ミネソタ州の電力共同組合 Great River Energy と共同で、開発と実証を進めてきました。

両社は2020年に提携し、20248月には実証設備の建設を開始、2025年後半から2026年初頭にかけて、1.5MW150MWh100時間持続の設備により、再エネ変動に対する需給調整能力の検証を実施しました。

2026
3月に入って、この鉄-空気電池の実用化が一段進んだことを示すニュースが相次ぎました。

Google、効率面での不利を承知の上で、Form Energy30GWh級鉄-空気電池に巨額投資」
  Energy Storage News, March 11, 2026
 
     https://www.energy-storage.news/google-bets-big-on-30gwh-of-form-energys-iron-air-battery-storage-despite-efficiency-trade-offs/

Form Energy、米国の新たなAIデータセンター向けに、12GWhマルチデイ-空気電池を供給することで合意」 
  Energy Storage News, March 27, 2026
 
    https://www.energy-storage.news/form-energy-signs-12gwh-agreement-to-supply-multi-day-iron-air-batteries-to-new-us-ai-data-centres/

以下、系統用電力貯蔵技術としての鉄-空気電池の現状と将来性を、簡単に整理してみます。

1
.数日間の電力貯蔵をねらう技術

太陽光発電などの変動性再生可能エネルギー(VRE)の導入が進む中、電力系統には需給調整機能の強化が求められています。

現在主流のリチウムイオン電池(LiB)は、数時間程度の調整には適していますが、気象変化に伴う数日規模の需給ギャップに対応しようとすると、コスト面で不利になりやすいという課題があります。

これに対し、Form Energyが開発している鉄-空気電池は、このようなマルチデイ(数日間)貯蔵を主な対象としており、近年、商用段階への移行が明確になってきました。

2
.技術概要:鉄の「さび」を利用する呼吸する電池
 
-空気電池の原理はシンプルです。
    •   
放電時:大気中の酸素を取り込み、鉄を酸化鉄(さび)に変える過程で電子を取り出す
    •   
充電時:外部から電気を与えて、酸化鉄から酸素を分離し、鉄に戻す

Ironair_battery

主な特徴としては、次の点が挙げられます。
    •   
材料の入手容易性
       
主原料は鉄、水、空気であり、リチウムやコバルトのような希少資源に依存しません。
    •   
安全性
       
水系電解質を用いるため、発火リスクが小さく、都市近郊やデータセンター併設にも適しやすいと考えられます。
    •   
長時間放電特性
        100
時間以上(約4日)の連続放電を視野に入れた設計となっています。

3
.「効率の低さ」をどう見るか

この電池で最も議論になりやすいのは、充放電効率(RTE)が4050%程度と、LiB(約90%)よりかなり低いことです。ただし、これを単純な欠点とみるだけでは不十分です。低効率でも経済的に成立しうる条件が存在します。

    •    設備コストの低さ
    LiB
のシステムコストが100ドル/kWh前後であるのに対し、Form Energyは鉄-空気電池について20ドル/kWh以下を目標にしており、商用案件でも30ドル台/kWhを達成したとされています。
    •   
余剰再エネの活用
   
出力抑制される再エネ電力や、価格がゼロまたはマイナスになる電力を充電に利用できれば、効率が低くても設備費の安さで全体として競争力を持つ可能性があります。
    •   
用途の割り切り
   
この電池は、LiBのような短時間・高効率用途ではなく、数日規模の安価な蓄電に用途を絞ることで価値を出そうとしている点に特徴があります。

L
 
4
2026年の商用化動向:AIデータセンター需要との接点

2026
年に入ってからの動きで注目されるのは、この技術が単なる実証段階を超え、大規模需要家向けの基幹インフラ候補として扱われ始めていることです。
    •    Google
による30GWh級の導入計画
      
ミネソタ州で、24時間365日のカーボンフリー電力供給を支える手段の一つとして、世界最大級の蓄電案件が動き始めています。
    •    Crusoe
社との12GWh供給合意
      AI
データセンターのような、大きくて比較的一定した電力需要に対し、再エネ主体の電源構成を支える補完技術として位置づけられています。
    •   
海外展開の開始
      2026
3月には、アイルランドで1000MWh級の案件も報じられ、米国外への展開も始まっています。

5
.将来性と限界

-空気電池の登場により、数日程度までの電力需給調整を、比較的低コストで電池が担える可能性が見えてきました。

しかし、例えば太陽光発電のみの系統の需給調整を行う時に出力抑制なしの場合は(日本の日照条件では)約2か月分の電力貯蔵容量が必要であり、変動再エネの比率が一定以上の系統では需給調整を電力貯蔵だけに依存することは現実的ではなく、他の発電手段との組み合わせが引き続き不可欠です。(参考資料3)

したがって、鉄-空気電池は「万能解」ではありませんが、リチウムイオン電池では高コストになりやすい数日規模の蓄電領域を埋める有力な選択肢として、今後の展開を注視する価値があると考えます。

参考
1. Form Energy, "Multi-day storage: the pathway to a reliable, clean, and secure grid"
        https://formenergy.com/technology/battery-technology/
2. Kirill Mikhailov, "Iron-Air Batteries — The Future of Long-Duration Energy Storage — Form Energy — Impact on Other Sectors" (Oct 16, 2024)
        https://medium.com/@kirillomikhailov/iron-air-batteries-the-future-of-long-duration-energy-storage-form-energy-impact-on-other-9e3e4dee92ec

3.「出力抑制(出力制御)を上手に使おう! 太陽光発電100%系統における出力抑制率と電力貯蔵必要量の関係」
http://hori.way-nifty.com/synthesist/2023/06/post-98e0ad.html

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