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AIによる棋譜の解析・評価レポートの作成 ― テスト速報

AI が、囲碁対局の棋譜をどの程度まで解析し、どの程度まで整理・評価してレポートできるかを、囲碁対局解析ソフトと生成系 AI を組み合わせて試してみた。

■ テスト方法

KGSでの実戦対局の棋譜をこの環境で解析し、解析済みの SGF ファイルを得た。

ダウンロード - goodliferoadster_25.11.16.sgf

対局の解析
 使用ソフト:Lizzie Yzy 2.5.3
 エンジン:OpenCL 18B s-913
 GPU:NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti
 解析条件:1手あたり 5 秒

生成系 AI への入力
・解析済 SGF ファイル

ダウンロード - goodliferoadster_25.11.16_analyzed_20251116151555.sgf

Goodliferoadster_251116

  ・Hawk Eye のスクリーンショット画像(正確度・一致率・損失目数分布などを表示)

Hawkeye


これら 2 つを ChatGPT 5.1 Thinking にアップロードし、プロンプトでレポート分量(今回は A4 1 ページ程度)を指定して、レポート作成を依頼した。

ChatGPT は、解析済 SGF から各手の評価値・損失目数・最善手を読み取り、
 悪手ランキング
 中盤だけの成績
 座標つきのローカル解説
などを作成する。また Hawk Eye 画像を参考に、全体の正確度や損失分布の「見た目」も踏まえて総評を行う。

なお ChatGPT 5.1 Thinking 自体は囲碁エンジンを持っておらず、外部のエンジンも動かせない。そのため、解析していない生の SGF 棋譜を渡した場合には、形・筋・弱点(アタリ/薄み/連絡など)をパターンとして認識しつつ、「強めのアマが口でやる感想戦」レベルを目指した、人間の感想戦風コメントを返してくる。勝率○%や「○目半良い/悪い」といった精密な数値評価、死活やコウの完全読み切りといったエンジン級の正確さは出てこない。

以下、今回 AI が作成したレポートをそのまま掲載する。
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1. 全局の概要
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ルール:日本ルール、コミ 0.5 目、黒 2 子置き(左下 (4,4)、右上 (16,16) にハンデ石)。開始時点の AI 評価は、黒勝率ほぼ 100%、目差約 +19 目。つまり「ハンデ通りなら黒がかなり有利なスタート」である。

【序盤】
黒はハンデ石を軸に、
 下辺~左辺
 右上~上辺
へバランスよく勢力を広げ、堅実に地をまとめていく。
白は、
 上辺中央?右辺からの打ち込み
 下辺側への進出
で黒の模様を細かく削ろうとするが、AI の目差はずっと黒+15?20 目前後を維持。
大きな失着はなく、「黒がハンデのリードをそのまま持ち越したまま中盤へ」という流れになっている。

【中盤前半】
主戦場は主に、
 右下隅~下辺右側
 そこから中央寄りへの連絡の争い
である。
白は下辺右側に深く踏み込み、黒地を削りつつ攻め合いを狙うが、AI から見るとやや踏み込み過ぎで、形勢を縮めるどころか逆に黒リードを広げている局面がいくつかある。
ここでも黒は多少の緩手はあるものの、危険な石を作らずにリードを保持している。

【中盤後半~終盤】
100 手前後では、下辺中央?左寄りの整地をどう打つかがポイントとなる。
黒は AI 推奨よりやや小さい手を選ぶ場面があり、本来なら +40?50 目差にできたところを、+30 目前後まで少し縮めてしまっている。
それでも形勢としては依然として黒が圧倒的である。
終盤は大きなコウや殺し合いもなく、黒が安全志向で地をまとめて中押し勝ち。
途中で互角近くまで迫るような揺れは一度もない。

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2. 形勢が大きく動いた局面
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ここでは代表的に 2 箇所だけ挙げる。
座標は BLN2 式((x,y)=左から x、下から y)を用いる。

Bln2
参考:BLN2 座標の説明

【(1) 71~75 手前後:下辺右側の攻防】
エリア:右下隅~少し左にかけての下辺右側。

白が下辺二線に深く打ち込み、黒地の中でもがくような展開になる。

実戦では、白 71 手目あたりに (19,2) 付近への踏み込み、続いて (19,3)、(12,3) 近辺などへの継続手があったが、AI から見るといずれも「重くなりすぎている侵入」で、1 手ごとに 10 目前後ずつ黒リードを広げてしまう手と評価されている。

一方、黒も (18,2)、(13,2) 付近の二線の受けを選んだため、本来 AI が推奨する三線の急所(例:P5 や Q5 近辺 = (15,5),(16,5))に比べると、1 手あたり約 10 目ずつリードを縮める緩手になっている局面がある。

全体として、
 白の踏み込み:逆転を狙った勝負手だが自損気味
 黒の応手  :安全ではあるが、もっと厳しく打てばさらに大差にできた
という構図で、結果としては黒のリードがさらに拡大している。

【(2) 100 手前後:下辺中央~やや左寄りの整地】
エリア:下辺中央から左寄り、おおよそ (12,5) 前後を含む地帯。

ここでは、AI は一貫して M5 付近 = (12,5) を「地と厚みを同時に押さえる超特大の急所」として推奨している。

実戦では、黒 98 手目に (17,1)、100 手目に (15,1)、102 手目に (13,6) といった比較的小さい手を選び、本来 M5 (12,5) に一発打っておけば確保できていた利益を、合計で 20 数目ほど取り逃がしている形になっている。

それでもこの時点での地合いはすでに黒大優勢で、形勢そのものは「楽勝が、やや点差が小さい楽勝になった」程度にとどまっている。

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3. 統計結果から見える特徴(Hawk Eye)
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Hawk Eye の統計画面から読み取れる範囲でまとめると、次のようになる。

【正確度(全体)】
黒(goodlife):約 62%
白(Roadster):約 43%

【一致率(AI 最善手と同一手を打った割合)】
黒:およそ 6 割強
白:3~4 割程度

【損失目数の分布(1 手ごと)】
黒は全 88 手のうち、半分近くが「0.5 目未満の誤差」に収まり、大きな損失(6 目以上)はごく少ない。
白は全 89 手のうち、「3 目以上」の損失手が目立ち、12 目以上の大きな損失も複数回出ている。

【時系列の傾向】
時系列で見ると、
序盤から中盤にかけて白の損失が積み重なり、
終盤で黒がやや緩手を打つものの、白の追い上げには至らない、
というパターンになっている。

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4. 総合的なまとめと今後のポイント
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【黒の評価】
この対局は、「ハンデのリードを黒がほぼ崩さずに最後まで維持し、時々の揺れはあるが逆転のない一局」と言える。

【黒の良かった点】
・ハンデ石を生かした模様づくりが安定している。
・大きな乱戦や全滅級の事故がなく、危ない石を作らなかった。
・中盤の勝負どころでも、多少の緩手はあっても「致命傷になる一手」は打っていない。

【黒の改善ポイント(AI 目線)】
・下辺右側のような局面では、二線に付き合う前に三線の急所(P5/Q5 など)を先に押さえる発想を持つと、より効率的な打ち方になる。
・100 手前後のような整地局面では、「すでに勝っているときこそ M5 (12,5) のようなまとめの一手を逃さない」という感覚を養うと勝ち方がさらにきれいになる。

全体として、黒は内容も結果も安定した良い一局であり、AI 解析をヒントに「急所の見え方」と「安全運転と効率のバランス」を少し意識すると、次の対局でさらに精度が上がりそうな内容である。

【白の注意ポイント(AI 目線)】
一方、白は次の点に注意するとよさそうだ。
・中盤での「踏み込みすぎ」に注意する。
・下辺右側での侵入など、逆転を狙った勝負手がいくつか見られたが、AI 評価ではその多くが「重くなり過ぎて自損になっている手」で、1 手ごとに 10 目前後ずつ形勢を悪化させている局面がある。
・すでにハンデで不利な状態なので、無理な突撃よりも「相手の緩手を待ちながら、薄みをついて少しずつ差を詰める」方針を意識した方が、実戦的な勝ち筋が増える。
・三線・四線の大場を軽視しない。
・実戦では二線で粘る手や、局所的な利きを狙う手が多く、AI が示す三線・四線の急所(例:P5・Q5 付近)の価値を十分に活かせていない。「相手地の真下であがく手」よりも、「外側からまとめて効率よく削る手」を候補に入れることで、同じ一手でも収穫が大きくなる。
・大きな損失手を減らす意識を持つ。
・Hawk Eye の統計では、白は 3 目以上の損失手が目立ち、12 目以上の大きな損失も複数回出ている。すべてを完璧にする必要はないが、「これは本当に読み切れているか?」「もっと安全な代案はないか?」と一呼吸おいてから踏み込むだけでも、大損の回数を減らせる。
・序盤は「悪くならないこと」を最優先にする。
・置石局では、序盤から一気に形勢を戻そうとして無理をすると、そのまま差が開いてしまいがちである。
・序盤は「多少地合いで損をしてもよいので、薄い形や大きな弱点を残さない」ことを重視し、中盤以降に相手の緩手や打ち過ぎをとがめる作戦に切り替えると、全体としての安定感が増す。

総じて、白は「攻め急ぎ」と「重さ」が失点の原因になっており、一段階控えめな方針と、三線・四線の急所を重視する感覚を身につけることで、同じ内容の碁でも逆転のチャンスがぐっと増えるはずである。

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コメント

囲碁対局解析ソフトとChatGPTを組み合わせて、「AI が囲碁対局の棋譜をどの程度まで解析し整理・評価できるか」は時機にかなった素晴らしい試みです。
現状ではChatGPTが囲碁エンジンを持っていないため人間の感想戦風コメントに止まるにしても読みやすく文章化して対局者に改善点をアドバイスする能力は驚異的です。
近い将来に外部エンジンを内蔵した生成AIの登場が正夢であることを一囲碁ファンとして願うばかりです。


投稿: 山﨑直宣 | 2025.11.18 17:31

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