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CO2排出が少ない自動車は? 自動車電動化を考える

地球環境のために電気自動車への転換が世界的に叫ばれている。NHKが「経済産業省は『2030年代半ばには新車の100%を電動車にする』という内容にする方向で調整しています」と解説し、自動車雑誌が「エンジン車全廃へ秒読み開始 世界で広がるエンジン車排斥でどうなるクルマ社会」と報じている。

一口に「電動自動車」「電気自動車」と言っても、人によってどのような車を指すかいろいろある。「電動自動車」の呼称・定義についてはここに詳しく解説しているが、ここでは次のように呼ぶことにする。

 エンジン車=燃料を内燃機関で動力に変えて走行する車「ICEV」
 電気自動車=電力系統から電池に充電してモーターで走行する車「BEV」
 プラグインハイブリッド車=電力系統から電池に充電した電気と燃料により走行する車「PHEV」

上のように政府が発表しメディアが報じれば、殆どの人はエンジン車はあと10数年で買えなくなると思う。これに対して自動車工業会の会長の豊田章男・トヨタ自動車社長が記者会見で、大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!ミスリードやめて」と苦言を呈するのは尤もだと思う。


CO2は排気管だけから出るのではない

この電気自動車の騒ぎは、自動車のCO2排出を削減する手段として短絡的に「電気自動車」がプレイアップされたことだと思う。

ここで先ず自動車を含む陸上交通手段について、1km走るのにどのくらいCO2を排出しているか比較したTNMTのデータを見てみる。バスなどの大量交通機関もあるので、数値は乗員1名が1km走行する1人・kmあたりのCO2排出量(グラム数)で示している。

Average-carbon-emissions-produced-by-tra

上の図ではCO2排出プロセスを次のように5つに分類して各プロセスについて値を算出して合計している。

1.運行プロセス(直接)Operation(direct) 薄緑色
例:排気管からの直接排出、ブレーキ・タイヤの摩耗などによる排出

2.運行プロセス(間接)Operation(indirect) 濃緑色
例:充電までの発電・送電、給油までの燃料製造・輸送などにおける排出

3.メンテナンス (Maintenance) 濃灰色
例:車の維持に関わる排出

4.製造・廃棄処分 (Manufacture & Disposal) 灰色
例:製造・廃棄処分のための材料やエネルギーの排出

5.道路 (Roadway) 薄灰色
例:道路(橋・トンネル)の建設・維持工事・廃棄までの排出

なお、上の図の数値をインタラクティブに見るにはこのサイトにアクセスする。

自動車のCO2排出の優劣は?

上の図から自動車だけを抜粋した比較表を作ってみた。

Co2emissionvariouspowertrain

上の表のようにこの計算では、最もCO2排出の少ないパワートレインはプラグインハイブリッド車、次いで電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車(ディーゼル)、エンジン車(ガソリン)の順になっている。

このTNMTの評価は欧州における一つの評価結果であり、その元のデータの出典と思われるものは示されているが計算過程などはノウハウになるのか公表されてない。これらの数値は国により、また関連分野の技術の進歩により変わり得るので、一つの目安と考えた方が良い。TNMTサイトの最初のところにも、「このグラフは科学的に証明された結果を示すものではなく移動手段別の平均的CO2排出量の最善の推量を提示したもの」との注釈が記されている。

自動車のCO2排出削減の方策について

今後の自動車のCO2排出削減の政策策定では、上にあるようにCO2排出に関する各プロセスの評価を含む幅広い視野から検討を行うことが必要と考える。

1.CO2排出は全プロセスで考える

単に直接排出(燃料)、それに間接排出(発電)を加える、あるいはWell-to-Wheel評価などで比較するのではなく、製造・メンテナンス、廃棄なども考慮するライフサイクルで評価することが、本当の削減効果を知るために必要である。上のTNMTの計算例で、これまでの通説と異なって電気自動車(BEV)よりプラグインハイブリッド車(PHEV)の方がトータルの排出が少なくなっていることは、今後の政策策定において多角的な評価が重要なことを示していると思う。

2.炭素リサイクルの燃料を使う

自動車用炭化水素燃料は将来カーボンニュートラルになっていくと考えて、将来のパワートレインを考える方が良いと思う。将来の燃料として、eFuel(回収CO2と再エネ電力から製造)やバイオ燃料(バイオマスから製造)を使用する場合は、炭素を循環使用しているのでカーボンニュートラルになる。

さらに、バイオ燃料製造に際して一部の炭素をバイオ炭として貯留すれば、このプロセスはカーボンネガティブになる。また、燃料化のためのバイオマスの水蒸気ガス化反応に原子力や太陽熱などのカーボンフリーの熱を供給すれば、バイオマスの燃料への転換を収率良く行える。

これらの燃料をエンジンあるいは燃料電池(SOFC)で動力化して、プラグインハイブリッド車(ハイブリッド車もあり得る)で使用すれば運行プロセスのCO2排出を小さくできる。将来のプラグインハイブリッド車では、全走行距離に占める系統電力で走行する距離の割合(ユーティリティ・ファクター、UF)が大きくなり、燃料使用量が大幅に減少する。例えばUF=0.85のプラグインハイブリッド車では、燃料必要量はエンジン車の場合の15%程になり、炭素循環方式での供給が可能と考えられる。

3.自動車と電力系統を統合した運用を考える

将来、V2G技術などを利用して自動車と電力系統を統合した運用(VGI、Vehicle-Grid Integration)を行うことになれば、太陽光・風力などの変動型クリーン電力が増加する電力系統の安定化によりCO2排出削減に資する。

車から系統に電力を融通する時、バッテリー容量は大きいが走行のための充電量を残す必要がある電気自動車と、充電量に起因する航続距離不安(Range Anxiety)がないプラグインハイブリッド車の両方の、それぞれの特長を生かしたVGIシステムの運用を考えていく。

追記1:「電気自動車が一番クリーンな車とは言えない」
(エネルギー関係の友人へのメール 2021.10.20)

地球環境のために電気自動車への転換が世界的に叫ばれています。テレビが「経済産業省は『2030年代半ばには新車の100%を電動車にする』という内容にする方向で調整しています」と解説し、自動車雑誌が「エンジン車全廃へ秒読み開始 世界で広がるエンジン車排斥でどうなるクルマ社会」などと報じています。

政府が発表しメディアが報じれば、殆どの人はエンジン車はあと10数年で買えなくなると思います。これに対して自動車工業会の会長の豊田章男・トヨタ自動車社長が記者会見で、大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!ミスリードやめて」と苦言を呈するのは尤もだと思います。

一口に「電動自動車」「電気自動車」と言っても、人によってどのような車を指すかいろいろあります。通常「電動自動車」には、下記の中のHEVとPHEVとBEV(EV)、それに燃料電池車(FCV)が入ります。

・エンジン車=燃料を使用して内燃機関で動力に変えて走行する車「ICEV」
・ハイブリッド車=内燃機関と電気モーターの2つの動力源を備えて燃料を使用して走行する車「HEV」
・プラグインハイブリッド車=電力系統から電池に充電した電気と燃料を使用して走行する車「PHEV」
・電気自動車=電力系統から電池に充電した電気を使用して電気モーターで走行する車「BEV」

一般に、電気自動車が最もCO2排出が少なくクリーンと思われています。確かに、車の排気ではそうですし、発電所や精油所まで遡っても、さらに油井やガス田まで遡ってWell-to-Wheelで計算しても、電力のCO2排出がゼロに近づく将来は電気自動車が一番クリーンになりそうです。

しかし、車の燃料の方もCO2排出を減少するべくいろいろな開発が進められています。ガソリンにエタノールを混合したE15やE85、バイオマス・ベースのFAMEやHVOなどのバイオディーゼル油(BDF)、バイオマスなどからFischer-Tropschプロセスで製造するFT油、回収CO2と再エネ水素から製造する「eFuel」、などなど。

電力も燃料もCO2排出ゼロに近づいていく将来、製造・走行・廃棄までを含むライフサイクルで評価した場合、どのパワートレインの車種がkm走行あたりのCO2排出量が一番少なくなるか、検討・評価が進められています。

最近の欧州における評価例を以下紹介します。
"The greenhouse gas emissions of an electrified vehicle combined with renewable fuels: Life cycle assessment and policy implications"
Applied Energy, Volume 289, 1 May 2021, 116621

下の図は電気はEUの2050年電力構成、燃料はガソリン・E85(エタノール85%ガソリン)・HVO(水素化植物油)を使用した場合のハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車のCO2排出量の比較です。

Fig3s

この例では、液体燃料のHVOを使用したハイブリッド車が最もクリーンになります。またE85ガソリンを使用したプラグインハイブリッド車でも電気自動車よりクリーンです。E85ガソリンは日本では市販されていませんが、海外では既に使用されておりE85を使用できるフレックス燃料の自動車は日本でも製造しています。

このように電気自動車は駆動用の電池の製造などにおけるCO2排出が大きいために、ライフサイクルで評価した時に電池の小さいHEVやPHEVの方がCO2排出が小さくなります。

日本の条件でもこのような評価をして合理的な政策選択に反映したいですね。

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コメント

上の表のようにこの計算では、最もCO2排出の少ないパワートレインはプラグインハイブリッド車、次いで電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車(ディーゼル)、エンジン車(ガソリン)の順になっている。

この計算は全く間違ってますね。資源、メカ、エネルギーすべての面で論理的にはPHVはEVとHVの間に来るはず。電費を安く見積もればEVより、電費を高く見積もればHV寄りになる。

なんでこうな異常な結果になるかというと

1)PHVの運行(直接)がEVやHVに比べ異常に低い
2)EVとPHVの電費はカロリー換算であって効率が入っていない絵空事(すべてが太陽光か風力なのか?)原子炉は廃炉費用を入れると高くなる。

個人的にはPHVがEVやHVよりエネルギーが少なめになっている時点で信用ゼロです。まったく参考にならないどころか、議論のベースとしては信頼性の低いデータを出すことが正しい理解に有害ですらある。

投稿: FUSHIKIZ | 2021.06.19 09:18

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