囲碁の点数制の手合割方法--どのような手合割表が良いか?
グループで囲碁を楽しむとき、実力差をならすために「手合(置石やコミなどのハンディ)」を付けます。手合を決める目安としては、昔ながらの段級位のほかに、最近は「点数制(持ち点)」を使う例も増えています。
点数制の良いところは、段級位よりも細かく実力を数値化できる点です。点数差に応じて手合を決めれば、実力差があっても、なるべく互角に近い条件で対局できます。
よく使われている点数制の手合割
点数制の手合割として広く用いられている方式の一つに、緑星学園が始めたとされる次の表があります。表の数値は対局する二人の「点数差」で、そこから置石数(子)とコミ数(目)を読み取って手合を決めます。
また、日本棋院(有楽町囲碁センター)では、置石1子に相当する範囲を「互先」と「定先」に分け、2子以上は各置石範囲を一括する方式を用いています(ジゴ引き分けのためコミは設定しない)。
私が「碁を楽しめる」と感じる手合割の条件
最適な手合割は、グループの実力差の幅や、各人の好みによって変わると思います。ここでは、私自身が「これだと碁が一番楽しい」と感じる条件を挙げます。
① 実力が接近している相手とは、ハンディなしで勝負したい。
互先のコミ6目半は、先手の有利を調整するためのもので、実力差を埋めるハンディとは別物です。握って先後を決めて「いざ勝負」という互先は、碁の醍醐味だと思います。
② 実力差がある程度以上なら、適切なハンディを付けたい。
置石やコミで差が程よく埋まると、終盤まで勝負になりやすく、対局が面白くなります。
③ 点数差に対して手合が滑らかに変わるのがよい。
点数が少し動いただけで手合が急に変わる(ジャンプする)と、納得しにくくなります。できるだけ滑らかに変わる方が運用しやすいと考えます。
条件に合った手合割表
別記事「囲碁AIソフトの目差計算に基づく手合割表」に示した、置石と目差の関係(AI評価)を踏まえると、以下の手合割表はいずれも互先の幅が確保されており、適切な設計であると考えられます。
手合割表B
特徴:
① 1段(=13点差)をコミで2分割することで、手合変化が滑らかです。
② 使用するコミは6.5目と0.5目であり、親しみやすく、KGSなどのインターネット対局サイトでも一般的に採用されています。
③ AIによる理想ベースラインに比較的近いものの、全体としてやや小さめの値となる傾向があります。
手合割表C
特徴:
① 2子以上の置碁ではコミが0.5目のみであり、手合設定が簡単です。
② 2子以上では手合変化の段差が大きくなります。
③ AIによる理想ベースラインの上下に分布しており、平均的に整合しています。
手合割表2B1
特徴:
① 1段(=13点差)をコミで2分割することで、手合変化が滑らかです。
② 使用するコミが3.5目および-3.5目と通常とは異なるため、一定の慣れが必要です。
③ AIによる理想ベースラインの上下に沿っており、良好に整合しています。
これらの中でも、理論との整合性と手合変化の滑らかさのバランスから、2B1方式は特に有力な選択肢であると考えられます。
手合割の狙いは、実力差があっても終盤まで勝負になる碁を増やすことです。そのためには、点差に応じて手合が無理なく滑らかに変わる表が一番だと思います。
関連ブログ記事
1. 囲碁の点数制の手合割方法の続編「コミ出し方式」(2018.10.21)
2. 囲碁AIソフトの目差計算に基づくて手合割表(2023.06.02)
付記: 互先について
囲碁において「互先」は、置石やコミによる実力差補正を行わない、もっとも純粋な勝負形式である。実力が同程度のときはニギリによって黒白を決め、差がある場合には弱い側に置石(ハンディキャップ)を与えるという整理は、広く共有されている。
互先は囲碁の基本的な対局形式であり、同格帯の対局を「調整なしの勝負ゾーン」として確保することは、リーグ運営における満足度(納得感・楽しさ)を高める合理的な設計方針となる。
また、実力差の推定が不確実になりやすい“小差域”においては、補正を細かく調整するよりも、互先での対局を優先する方が運用は安定し、対局者の心理的納得も得やすい。したがって、互先帯(例えば d = 0~6)を明示的に確保することは、単なる伝統の尊重にとどまらず、リーグ設計上の合理性にも直結する。
通常、この調整なしの勝負ゾーンに続く領域、すなわち持ち点差 d が概ね 6~7 程度以上となる対局は「定先」となる。定先では黒が先番を持ち、コミを軽減した手合(典型的にはコミ0.5目)となるが、d が大きくなるにつれて白に有利な手合となり、黒が挑戦する形の勝負ゾーンが形成される。
この定先ゾーンにおいてコミをその領域の平均値(例えば -3.5目程度)に設定すれば、2子以上の置碁と同様に、ハンディが補正された対局領域として扱うことができる。
※本稿は26.02.16に旧稿を全面的に書き直しました。旧稿は、この下に残してあります。
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旧稿:囲碁の点数制の手合割方法--どのような手合割表が良いか?
グループで囲碁を楽しむ場合、囲碁の実力を格付け(レーティング)する段級位や点数制によって実力差を調整する方法が用いられている。
点数制は段級位より細かく実力を数値化しているので、対局する2者に実力差があっても同じ確率で勝てるように点数差に応じて置石数やコミ数などのハンディを決める「手合割」ができる。
この点数制による手合割方法としてよく用いられているのは、緑星学園が始めたとされる右の表のような方式が碁会所や囲碁のグループでよく使用されている。この表の中の数値は対局する2者の点数の差で、ハンディとなる置石数(子)とコミ数(目)を表の縦と横から読み取る。
グループの実力差の巾や個人の趣向によって違うと思うが、私が碁を最も楽しめる手合割は次のような条件を満たすものである。
① 互先の対局を重視する。実力が接近している人との対局はハンディキャップなしで戦いたい。互先のコミ6目は先手有利を調整するものでハンディではない。ハンディがない互先の対局は将に「一騎討ち」、握って先手後手を決め「いざ勝負」は碁の醍醐味。
② 実力差がある程度以上には適切なハンディをつける。
③ 実力のレーティングとして点数制を用いる場合、点数差の変化に対するハンディの変化はスムースで逆転やジャンプを避ける。
④ 置石数が多い対局は上手に厳しくなり本来の碁とは異質なものになるので、ある置石数(例えば6子)以上ではコミによるハンディで調整する。
⑤ 手合割の方法は判り易いのが良く、各自のレーティング(点数)は各自が理解し、記録し、管理できるようにする。碁会所で配布しているような点数表のカードを利用できれば便利である。左の写真は東京駅八重洲口の「いずみ囲碁ジャパン」で使用されているカード。
右上の表のような碁会所などで普通用いられている手合割表では上の条件の①と④を満たしていない。
条件に合った手合割表
1,「①互先の対局を重視する」に合った点数制による簡明な手合割としては、下の手合割表に示すものがある。これは細かくコミを変えることはせず、「互先は6目半、定先(1子局)~置碁は黒から半目(すなわち持碁は白勝)」としている。私が参加しているインターネットのリーグ戦で実際に使用していたが、定先部分が長過ぎるなどの課題があり、この手合割表は今は推奨しない。詳しくは、下の「追記」を参照されたい。

追記:この続々編の「囲碁AIソフトの目差計算に基づくて手合割表」に記載の置石と目差の関係を調べた結果などから、次の手合割表(エクセルファイル ダウンロード - teaiwari9b.xls、パワーポイントファイルダウンロード - teaiwari9b.ppt)の方が上よりも適切と考えるようになった。下の手合割表を推奨する理由をまとめたPDF資料 ダウンロード
その理由は、①AI囲碁ソフトによる計算結果と整合、②1段13点差を2分割する手合調整がスムース、であるなど。なお、続々編に同様の手合割表で8子~9子の部分がAI囲碁ソフトによる計算結果をより忠実に取り入れたものが置いてある。(2024.04.23)
2,「①互先の対局を重視する」に合った手合割で、点数差によりコミを細かく調整するものとしては下の手合割表が考えられる。これは碁会所などで通常使用されているものにハンディなしの互先の範囲を追加したものである。

3,「①互先の対局を重視する」と「④6子局以上では置石数でハンディを調整する」の条件に合った点数制による手合割として、下の手合割表が考えられる。

通常、点数の増減は1勝が+1、1敗が-1であるが、優勝の場合にボーナスで+点を加算する場合がある。また、新しくグループをつくった時など点数が落ち着くまでの間は1勝敗で+ー2点として適正点への収斂を速くする場合がある。
注)
1) この表は最強者と最弱者の点数差が100点程度を想定している。 2)置石の代わりにコミでハンディをつける場合に点数差の1/2をコミに換算する「囲碁天寿会」の「総コミ制」の方法にヒントを得て別表を作ったがこれは点数差70点以上で下手に厳し過ぎるようである。 3)本稿の内容を一部修正した。(2015.3.8)
2) 囲碁の点数制の手合割方法の続編 「コミ出し方式」をここに書きました。
(2018.10.21)
3)囲碁の点数制の手合割方法の続々編「囲碁AIソフトの目差計算に基づくて手合割表」をここに書きました。
(2023.06.02)
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