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プラグインハイブリッド車の燃料消費率 -- BMW i3 REx に見る日本・EU・米国の差 -- 652km/Lと166km/Lと37.4km/L

Mediagallery_3「ZEVの新カテゴリー"BEVx"とは?」のページで紹介したように、カリフォルニア州のゼロエミッションビークル「ZEV」の新しいカテゴリーの「BEVx」を目指して開発されたレンジエクステンダーのBMW i3 RExは、PHEVとしては異例に長い電力走行距離(CDレンジ)のため、日本、EU、米国の各国が定めたプラグインハイブリッド車の燃料消費率には非常に高い値を示すものがあり、また国による差異も相当に大きい。以下、この辺の事情を探ってみる。(写真出所

日本におけるPHEV燃料消費率の比較

Jc08phevfc例えば、日本の国土交通省が2009年7月に決めた「プラグインハイブリッド自動車の燃費算定等に関する実施要領」に従ってBMW i3 RExの「プラグインハイブリッド燃料消費率」を計算すると実に652km/Lとなり、プリウスPHVの61.1km/LやアウトランダーPHEVの67.0km/Lより桁違いに高い非現実的な値になる。(右表) BMW i3 RExのカタログにはこの「プラグインハイブリッド燃料消費率」の値は掲載されていない。なお、2009年の国土交通省PHEV燃費算定に関する参考ページはここ

日本・EU・米国のPHEV燃料消費率の比較

では、米国やEUでのBMW i3 REx のPHEV燃料消費率はどのくらいか? 

日本・EU・米国では、自動車の燃料消費率を試験するモード・手順(JC08、NEDC、SFTPなど)が異なり、また電力走行(CDレンジ)の電費とハイブリッド走行(CSレンジ)の燃費からPHEV燃料消費率を算出する際のユーティリティファクター(UF)の定義、さらに電力/ガソリンのエネルギー加算の考え方も異なっている。

それ故これらから算出されるPHEV燃料消費率の値に違いがあっても当然であるが、日本・EU・米国のそれぞれの試験モード、ユーティリティファクター、エネルギー加算方法によるBMW i3 REx のPHEV燃料消費率の値を同じkm/Lの単位に換算して比較してみると、日本は652km/L、EUは166km/L、米国は37.4km/Lとやはり大きな違いが出ている。(下の左の表)

ここで使用した各国のモード燃費からPHEV燃料消費率を算出する式を分類して示すと(下の右の表)、日・EUが「PHEV燃料消費率1」、米が「PHEV燃料消費率2」となる。なお、筆者が自動車技術会に提案した方法は「PHEV燃料消費率3」である。詳しくは資料(12)またはこれらで引用している各国の資料を参照されたい。なお、日本は2014年に国土交通省が「プラグインハイブリッド燃料消費率」の表示の見直しを行うとしている。(12

PhevfcjapanuseuVariouscalculationmethodphev1

PHEV燃料消費率に差が出る理由

Mileagediscrepancyjama3この日本・EU・米国のBMW i3 RExのPHEV燃料消費率の652km/Lと166km/Lと37.4km/L
の差は次の理由によると考えられる。
 ① 燃費試験のモードの違い
 ② ユーティリティファクター(UF)の値の違い
 ③ 電費と燃費からPHEV燃料消費率を算出する方法の違い

① 燃費試験のモードの違い

日本自動車工業会のレポートによると、モード燃費と実燃費(ユーザーが実際に走行した場合の燃費)の乖離の程度を、ユーザーの実燃費調査データをもとに

「モード燃費到達率」=実燃費/カタログモード燃費

として整理して回帰式を求めると、日本とEUでは右の図のようになる。これから、モード燃費が30km/Lあたりの実燃費は平均的にEUで約2割、日本で約3割低くなっている。

米国(EPA)では2008年の試験方法の改訂以降、全米平均のリアルワールド(現実的)運転条件と相関したテスト条件を設定(資料)しているので、個々の値は別として全体としては乖離がほぼ解消されてきている。(右の図に「モード燃費到達率」 y=1 として参考記入)

以上から、モード燃費からの乖離の大きさは、平均的に 日本>EU>米国 と言える。なお、BMW i3 RExの日・EU・米の電費[km/kWh]は日本 9.34、EU 7.41、米国 5.6、燃費[km/L]は日本 27.4、EU 21.4、米国 16.6なので、乖離の大きさと同じ順になっている。

② ユーティリティファクター(UF)の値の違い

Ufforjapaneuus4「フォルクスワーゲンがPHEVで"猛攻撃"、EUのCO2排出規制とパワートレインの方向」のページの解説にあるように、PHEVの全走行距離に対する電力走行の割合であるユーティリティファクター(UF)の日・EU・米の値は左の図のようになっている。

BMW i3 RExの外部電力による走行距離(CDレンジ)からUFを求めると、日本(0.958)>EU(0.872)>米国(0.834) となる。日本・EUの場合、PHEV燃料消費率は、1/(1-UF) に比例するのでUFの数値から、日本>>EU となる。

③ 電費と燃費からPHEV燃料消費率を算出する方法の違い

日本とEUのPHEV燃料消費率の算出は、消費した外部充電電力量を無視して、消費したガソリン量のみで全走行距離を除す方法(上の「PHEV燃料消費率の計算方法」の表の「PHEV燃料消費率1」)を用いている。

一方、米国のPHEV燃料消費率の算出は、消費電力量を熱量で等価のガソリン量に換算してこれを消費ガソリン量に加えて、全走行距離を除す方法(上の「PHEV燃料消費率の計算方法」の表の「PHEV燃料消費率2」)を用いている。

電費と燃費からPHEV燃料消費率を算出する方法による違いは、UFが大きい領域では、日本=EU>米国 となる。

なお、米国の方法でも、動力として使用する電力を熱として低く評価しているため、消費するエネルギーを低く評価することになるのでPHEV燃料消費率は高く出る。BMW i3 RExではUFが大きいので、VoltやPrius PHVなど他のPHEVより格段に良いPHEV燃料消費率(Combinedで88 MPG)が算出されている。(下のEPAデータ表のPHEVの部分の抜粋)

米国ではこの方法を電気自動車(BEV)の燃料消費率の表示にも使用しており、BEVやPHEVの燃料消費率をガソリンのMPG(Miles Per Gallon)で表示する時はエネルギー転換・熱力学に関わるエネルギー等価性から想定されるより高め(良い燃費)の値が出ることになる。これに対し、上の「PHEV燃料消費率の計算方法」の表の「PHEV燃料消費率3」は、エネルギー等価性にもとづくより適切な評価値を与えるものと考えている。

Epa_datafile_phev

以上、①、②、③の理由により、日・EU・米のPHEV燃料消費率の値は 日本>>EU>>米国 になっていると考える。

世界調和のPHEV燃料消費率への動き

世界調和のBEV/PHEV/HEVの燃料消費率に関する国際的な検討の場として、国連の「自動車基準調和世界フォーラム」(World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations)の一環として、「小型車の世界共通排出ガス試験法」(Worldwide harmonized Light-duty Test Procedure, WLTP)ワーキンググループおよびその中のEV(E-Lab)サブグループや「電気自動車・環境」(Electric Vehicles and the Environment, EVE )ワーキンググループなどが検討作業をしている。

これらのワーキンググループでは、BEV/PHEV/HEVの標準試験法や規制リファレンスガイドなどのとりまとめ・提案を行なっており、この中で「世界調和ユーティリティファクター」(Global Harmonized Utility Factor)についても統計データをまとめる方法論などの議論を行なっている。世界調和ユーティリティファクターの作成を本格的に行うには、自動車のドライビングパターンの統計データ収集作業など相当大掛かりなものになりそうである。

追記: 世界調和ユーティリティファクターに関するより新しい状況については、「WLTPにおけるPHEV燃料消費率のためのユーティリティファクターの検討」の項を参照されたい。

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