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フォルクスワーゲンがPHEVで"猛攻撃"、EUのCO2排出規制とパワートレインの方向

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VWはe-mobility戦略でPHEV(プラグインハイブリッド車)に注力

Forbes_cover050613s上のビューグラフは、フォルクスワーゲン・グループの将来技術部門のProf. Dr. Wolfgang Steigerによる講演資料の1枚で、2014年7月4日ロンドンで開催された「バークレイズ将来パワートレインシンポジウム」でプレゼンテーションされたもの。「将来の自動車交通—VWグループの持続可能なソリューション」(Future Mobility -- Volkswagen Group’s Solutions for Sustainable Mobility)と題する全31ページのPDFファイルはここからダウンロードできる。

VWグループは、自動車電動化e-mobilityに関して明快なビジョンを描いており、当面はPHEVやBEVの積極導入を進め、FCV(燃料電池車)については以前から研究開発を進めてきたが導入は2020年以降の問題と冷静に割り切っている。FCVに関するVWの方針やWinterkorn CEOの見解などは本ブログの『自動車メーカーによる燃料電池車の国際共同開発、「バスに乗らない」フォルクスワーゲン社』の中で触れている。

上のビューグラフのPHEVの導入計画を見ると、Prius PHVとVoltでPHEVを先導してきたトヨタとGMのお株を奪っており、まさにInside EVsサイトの見出し「VWがPHEVで猛攻撃を計画」(VW Group Plans PHEV Onslaught)という表現がぴったり。

2013年5月6日号のForbes誌の表紙にはVW社のWinterkorn CEOの写真と「GMとトヨタよ、ご用心—VWは間もなく地上最大の自動車メーカーになる」とあるが、果たしてVWのe-mobility戦略の先行きは?

CO2排出規制でメルセデスもPHEV路線へ

Mercedes_benz_s500_phev_010711450x2このPHEV化の方針はメルセデス・ベンツも同様である。2014年5月のMercedes Benz Cクラス・エステートの発表会における開発部門トップのThomas Weberの発言によると、メルセデスではこれまでBクラスやSmartForTwoなどの電気自動車を出してきたが、これからは2020年に向かって大型の車はプラグインハイブリッド技術に絞って開発し、そのためにモデュラーアーキテクチャであるMRA(Mercedes Rear-wheel Architecture)を活用していくとしている。

EUのCO2排出規制とパワートレインの方向

Euco2このようなPHEV化の方向は、欧州で2020年からフェースインする95gCO2/kmの排出規制が推進源になっている。先のVW社Wolfgang SteigerのCO2排出に関するプレゼン資料(右図)は、2020年からの規制に向かってこれまでの各種駆動技術の改良では不十分で、プラグインによる系統電力の利用と従来燃料による航続距離確保を併用するパワートレインへの変更の必要性を示している。

EUの乗用車排出ガス・燃費規制のECE R101 rev 3によると、PHEVのCO2排出量は下の式により計算される。

 M = (De x M1 + Dav x M2) / (De + Dav)

ここで
  M = PHEVの1km当たりのCO2排出グラム数[g/km]
  M1 = 充電電力走行(Charge Depleting, CD走行)時の1km当たりのCO2排出グラム数[g/km]、規定では充電する電力のCO2排出はゼロとしているのでM1=0
  M2 = 充電電力使用後のハイブリッド走行(Charge Sustaining, CS走行)時の1km当たりのCO2排出グラム数[g/km]
  De = Annex9規定の手順による充電電力走行(Charge Depleting, CD走行)の距離
  Dav = 再充電までに燃料で走行する距離、規定により25km固定にしているのでDav=25

上の式から

 M = M2 x Dav/(De + Dav) = M2 x 25/(De+25)

PHEVによるCO2の削減係数(Reduction Factor)をFとしてM=M2/Fで表す場合は上の式から

 F = (De+ Dav) / Dav = (De+25)/25

EUの規定によるハイブリッド車Priusとプラグインハイブリッド車Prius PHV(De = 25 km)のCO2排出量は、其々89 gCO2/kmと49 gCO2/kmになっており、PHEVはHEVよりCO2排出量が45%削減されている。

MercedesphevこのEUの規定によりMercedes Benz S500のエンジン車とプラグインハイブリッド車のCO2排出量を比較すると左の表のように、充電電力走行距離30kmのS500 PHEVの削減係数はF=(25+30)/25=2.2、CO2排出量は69 gCO2/kmとなり、エンジン車の210 gCO2/kmの55%減になる。

このように.EUの2020年以降のCO2排出基準に適合するためには、上に説明したECE R101のCO2算出規定に則ったPHEV化が最も手っ取り早い方法でCO2削減に要するコストも低く、フォルクスワーゲンやメルセデスがPHEV化を積極的に進めている大きな理由と言える。(参考資料12

EUのECE R101規定では、充電する電力によるCO2排出(M1)はゼロとしているので、PHEV化の効果が大き目に計算される。実際には、その国・地域の電源構成によって異なるが、系統電力は一次エネルギーから発電・送電を経て電池への充電に至る経路でCO2を排出しているので、M1に電力のCO2排出相当値を入れてPHEVの電力+燃料による全CO2排出量を計算する方が排出規制の意図に合っている。とくに大容量の電池を搭載して充電電力走行距離が長いPHEVの場合には、このような計算は必須と考えている。

以上延べたCO2排出評価の具体的計算方法の問題は別として、総論として、現在各国とも再生可能エネルギーや原子力による発電を増加させ発電のCO2排出を削減する努力をしており、自動車のPHEV化の方向は脱石油・脱化石燃料・CO2排出削減へ繋がる最も現実的で効果のある方法と考えている。

付記1: EUにおけるPHEVのCO2排出量・燃料消費率計算の考え方について

上で説明したようにEUのECE R101 rev3によるPHEVのCO2排出量M(g/km)は下式で定義されている。

 M = (De x M1 + Dav x M2) / (De + Dav)

ここでM1は外部充電電力による電力(CD)走行時のCO2排出量、M2は燃料によるハイブリッド(CS)走行時のCO2排出量、Deは外部電力充電より走行距離、DavはCD走行を終えた後のCS走行の距離で25kmの固定としている。

同じ考えでPHEVの100km走行当たりのリッター単位の燃料消費率C(l/100km)は下式で定義されている。

 C = (De x C1 + Dav x C2) / (De + Dav)

ここでC1はCD走行時の100km当たりの消費燃料量、C2は燃料によるCS走行時の100km当たりの消費燃料量、DeとDavは上と同じ。

EUでは外部充電に使用する電力のCO2排出とエネルギー消費を無視するのでC1とM1はゼロで、再充電までに燃料で走行する距離Davは25km固定としている。

このEUのDe+Dav(25km固定)の意味について、以下考察する。

◎ Dav=25km固定とは、外部充電した電池の電力を使い切った後は燃料(ガソリン、ディーゼル)を使用してハイブリッド走行するが、この距離は外部充電電力による走行距離(すなわち電池の大きさ)に関係なく25kmと仮定してCO2排出量および燃料消費率を計算することである。

◎ 日本・国土交通省(MLIT)の2009年のPHEV燃費算定実施容量(解説・リンク)および米国・環境保護庁(EPA)の2010年PHEV燃費算定ルール(解説・リンク)では、何れも自動車の1日当たりの走行距離分布の統計値から求めた平均的なユーティリティファクター(全走行距離に占める電力走行距離の割合で外部充電電力による走行距離の関数、Utility Factor、UF)を使用することになっている。

Ufforjapaneuus4◎ EUのDe+Dav(25km固定)の評価方法をユーティリティファクターUFで表してみると、UFは外部電力走行距離を全走行距離で除した値なのでUF=De/(De+Dav)となる。このEUのDav=25km固定の場合のUF値を日本(MLIT)と米国(EPA)の燃費などの審査に使用しているUF値と比較してみると、右の図のようになる。

◎ EUのUF=De/(De+Dav)の値を日・米のユーティリティファクターUFと比較すると、EUのUFの曲線は日本と米国のUFの曲線より勾配がやや緩やかで、日本と米国の線を縫うように上昇している。すなわち、外部電力走行距離が~70kmの領域では日本に近く、70~160kmでは米国に近いと言える。外部電力走行距離(De、CD距離)が160kmよりもさらに大きくなると、EUのUFは日・米より低くなり電力走行距離割合が少なく評価されることになる。

◎ 以上から、EUのDav=25km固定による方法は、自動車の走行パターンから求めた平均的なユーティリティファクターが定義し難い場合などは、簡単な計算でPHEVの効果を近似的に算出できる便宜的な方法と言える。大容量の電池を搭載して外部電力走行距離(De、CD距離)が長いPHEVの場合にはより確度の高い方法を使用すべきと考える。

◎ PHEVの燃料消費率とCO2排出量の算出に際して、外部電力走行(CD走行)のレンジにおけるエネルギー消費量とCO2排出量をゼロとする定義式は日本とEUで使用しており、大容量の電池を搭載してCD距離が長い場合にはPHEVのエネルギー消費量(距離当たりのエネルギー消費量)とCO2排出量を過小に評価することになるので何らかの対応(参考)が必要になってくると考える。

注) 世界共通の自動車排出ガス・燃費などの試験法作成活動WLTP(Worldwide harmonized Light-duty Test Procedure)の場でもUFについて議論が行われており、上の図と似た形の日・米・EUのUFの比較図が示されている。参考の資料に引用しているこのWLTPによるUFの比較図は横軸のスケールが示されておらず、また表示されている米国のUF曲線は現在EPAが使用しているSAEの「MDIUF」ではなく以前の「FUF」による値と思われる。米国のUFについては、上記参考資料やここを参照されたい。

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