ZEVの新カテゴリー「BEVx」とは? 小型エンジンと9リッター燃料タンク BMW i3 RExとマツダ・デミオ・RE
小型エンジンと9リッター燃料タンクのシリーズ型PHEV
BMW i3 REx
「BMW i3」は2010年にMega City Vehicle(MCV)としてコンセプトが発表された5ドアの都市型電気自動車で、その特異なスタイルとともに軽量のアルミニウム・シャーシーとCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ボディ、強力な167bhp・25.4kg-mモーターの駆動パワーなどの特徴を有している。この市販バージョンが2013年7月に公開された。
BMW i3には、純粋の電気自動車(電池電気自動車、BEV)バージョンと航続距離延長のための小型ガソリンエンジンと9リッターの燃料タンクを装備したプラグインハイブリッド車(シリーズ型PHEV、レンジエクステンダー、REx)のバージョンがある。
このi3 RExバージョンは2輪車で使われている2気筒647cc・36bhpの小型エンジン(左のイラスト)をモーターなどの電動駆動系と一体に装荷している(中央の写真の左側)。電気自動車i3 BEVバージョンではこのエンジンのスペースが空いていてステーだけが見える(右の写真)。BEVバージョンとRExバージョンをできるだけ共通の配置・部品構成になるように計画的に設計・開発してきたことが判る。
マツダ・デミオ・REレンジエクステンダー
マツダ・デミオEVはこれまで電気自動車としてリース販売されてきたが、これに航続距離延長のための小型ロータリーエンジンを搭載した「マツダ・デミオ・REレンジエクステンダー」の試作車が2013年12月に報道関係者に公開された。
デミオ・REも、シングルローター330cc・22kW(29.5bhp)の小型エンジンと9リッターの小容量燃料タンクを装備している点ではBMW i3 RExと同様であるが、デミオREではモーターなどの電動パワートレインは前部コンパートメントに置き、レンジエクステンダーエンジンと燃料タンクは後部のトランクの下に置いている。下の写真左はコンパクトに纏まったエンジンと燃料タンクのアセンブリで下の鏡でこの下部が見えるようにした模型、これを後部のトランクルーム(写真右)の下に置いている。
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従来型と新型のRExの違い、何故ガソリンタンクが9リッター?
この2車種のエンジンと燃料タンクはこれまでのレンジエクステンダーエンジン付きシリーズ型PHEVとは設計コンセプトが全く異なっている。
Chevy Voltやスズキ・スイフトのような従来型のレンジエクステンダーPHEVは外部充電電力による短距離のEV走行とガソリンによる長距離のハイブリッド走行の両方が可能なように設計されている。
一方、BMW i3 RExやマツダ・レミオ・REは、外部充電電力によって中距離をEV走行する電気自動車(BEV)であって、走行に際してドライバーの「航続距離不安」をなくすとともに実際に電池充電率が限度まで低下して電欠状態になった場合のためにガソリンエンジンからの電力で充電可能な場所まで走行可能なように設計されている。
下表の従来型と新型のレンジエクステンダーの電池容量と燃料タンク容量を比較を見ると、とくに燃料タンクの容量が大きく異なっており、新型のガソリン量が格段に少ないことが判る。
従来型REx Chevy Volt 電池容量 16kWh 燃料タンク容量 35.2L
従来型REx スズキ・スイフト 電池容量 2.66kWh 燃料タンク容量 43L
新型REx BMW i3 REx 電池容量 22kWh 燃料タンク容量 9L
新型REx マツダ・レミオ 電池容量 20kWh 燃料タンク容量 9L
このようなレンジエクステンダー走行は、自動車機能の一つである「リンプホームモード」」と似た考え方と言える。「limp-home」とは「家にたどり着く」の意味から、故障車を部品の損傷を抑えつつ低速走行で自宅や整備工場などに安全にたどり着けるようにする自動車のフェイルセーフモード/装備機能の一つである。レンジエクステンダー機能を万一の電欠時に充電場所まで走行するためのリンプホーム機能と考えるならば、小型のエンジンと9リッターのガソリンタンクは十分な出力/容量と言える。
カリフォルニア州のゼロ排出車の新カテゴリー「BEVx」
CARBの新しい規制パッケージ「先進クリーン自動車」
2012年1月、カリフォルニア州大気資源局(California Air Resources Board、略称CARB、カーブ)が「先進クリーン自動車」(Advanced Clean Car、略称ACC)プログラムという2018年~2025年車に適用される新しい規制パッケージの採用を決定した。
この先進クリーン自動車プログラムを構成する主要な3つの規制パッケージの一つが「ゼロ排出自動車」(Zero Emission Vehicle、略称ZEV)で、この中に新しい規制目的の自動車カテゴリーの「BEVx」を設定した。
この「BEVx」は"BEV (battery-electric vehicle) with a small 'limp-home' range extending engine or APU (auxiliary power unit) -- i.e., not a series-hybrid type vehicle equipped with a full-capability engine"、すなわちリンプホーム機能の小型レンジエクステンダーエンジン(CARBの呼称はAuxiliary Power Unit、略称APU)付き電気自動車(BEV)のことで、シボレー・ボルトのような本格機能エンジン付きの従来のシリーズ型PHEVとは異なったカテゴリーとなる。
先進クリーン自動車規制の元では、BEVxはBEVと同じ基準でゼロ排出マイルに基づくクレジットを得ることができ、要求される純BEVの中の50%までをこのBEVxにすることが可能である。
なお、2018年からZEV規制の対象は大量販売メーカー(LVM, Large Volume Manufacturer, カリフォルニア州で年6万台以上販売するメーカー、GM、Ford、Chrysler, トヨタ、日産、ホンダの6社)から中量販売メーカー(IVM, Intermediate Volume Manufacturer, カリフォルニア州で年4.5千台~6万台販売するメーカー、Volkswagen、BMW、Mercedes-Benz、マツダ、富士重工、Hyundai、・・・)まで拡大する。
新カテゴリーBEVxの考え方
カリフォルニア州大気資源局(CARB)がACC規制パッケージについて説明した資料の中でBEVxの考え方を知る上で次の二つのレポートが参考になる。
① CARBのACCに関する初期趣意書(ISOR)
California Air Resources Board
“STAFF REPORT: INITIAL STATEMENT OF REASONS -- Advanced Clean Cars -- 2012 Proposed Amendments to the California Zero Emission Vehicle Program Regulations” (December 7, 2011)
② CARBのACCに関する最終趣意書(FSOR)
California Air Resources Board
“FINAL STATEMENT OF REASONS FOR RULEMAKING -- Including Summary of Comments and Agency Responses -- 2012 Amendments to the Zero Emission Vehicle Regulations -- Public Hearing Date: (January 26 and 27, 2012)
上記ISORとFSORの記述からBEVxに関わる話題を以下ピックアップする。
● CARBに対して複数のメーカーからZEVの中にBEVxのようなレンジエクステンダーの新カテゴリーを設けるよう提案があった、という記述がISORの中にある。ニュース記事(1、2)には、ACC規制パッケージに関するパブリックヒアリングにおけるCARBのスタッフと委員のコメントの中にBMW社がこの種のクラス分けに特別に興味を示したという記述があり、またBMWのほかにクライスラー社とフォルクスワーゲン社がBEVxカテゴリーの新設を支持したという記述もあり、BEVxのアイディアは一部のメーカーにより提案され支持されたことが判る。
● メーカーの提案として、BEVxは限定された走行距離の延長が可能な小型エンジンのAPUを装備しているが主に外部充電によるEV走行を行う自動車で、PHEVよりもBEVに近く、APU運転モードでは充電場所までの走行が出来る程度に性能が削減される、との記述がある。
● しかし、ISORの中にあった「要求ではないが、レンジエクステンダーのAPUモード運転に際して速度制限などの性能限界を設けることをメーカーに期待する。バックアップAPUの意図は電池を充電するのではなく、車を充電場所まで走行させるためのCS(Charge Sustaining、ハイブリッド)モードで走行するためである。BEVxは改良された近隣運転能力(Regional driving capability)を求めるユーザーのためで、長距離運転に使用するためではない」という主旨の記述がFSORではなくなっている。
● CARBがBEVと同じEV走行距離のBEVxを規制上同等に扱うには理由があるとして、BEVでのドライブの場合に運転者は電池に残っている距離についてある程度控えめの想定をするが、BEVxの運転者は電池に残っている距離の全部あるいは殆ど全部を走行する想定ができる。それ故、これまで走行距離の関係でBEVの購入を考えてなかった運転者にBEVxはアピールすることができることになる、などの理由を挙げている。
BEVxの定義
「BEVx」(Range-extended battery-electric vehicle)は「相対的に(外部充電)電力走行距離が長いAPU(レンジエクステンダーエンジン)付きの電気自動車」(A relatively high-electric range battery-electric vehicle (BEV) to which an APU is added)と定義されているが、FSORをもとにBEVxの主な要件を下記および右図にまとめる。正確にはCARBの関連資料を参照されたい。
1.外部充電による走行距離(CD距離)は75マイル(120.7km)以上とする(2012~2017年のBEVxの最低要求へ適合の場合)。このCD距離75マイルの値はISORにおける80マイル(128.7km)からの変更。
2.APU(レンジエクステンダーエンジン)による走行距離はCD距離以下とする。
3.APUは電池の充電電力が設定値まで低下(deplete)するまでは作動させない。
4.SULEV排ガス基準とエバポ排出ゼロ基準に適合すること。
BEVxの要件の「REx走行距離=<EV走行距離」の条件から、電力走行距離を75マイル・120kmとしてレンジエクステンダー走行距離も同じとすると、ガソリンタンク容量として2.4ガロン・9リッター辺りになると考えられてきた。(2014.4.25付けのBMW Blogによると、当局の要請によりガソリンタンク容量が1.9ガロン(7.2リッター)に減量)
この定義・仕様に合致したBEVx第1号がBMW i3 RExになるが、BMWがi3 RExの構想に基づきZEVの一つのカテゴリーとしてBEVxを提案し、それが規制に組み込まれてBMW i3 RExの導入に至る、自動車メーカーの積極的・能動的な姿勢とCARBのオープンで受容的な姿勢が、CARBの趣意書から読み取れる。
今後、CARBは、PHEVの新しいカテゴリーBEVxとPHEVの従来からのカテゴリーTZEV(Transitional ZEVの略、前のAT-PZEV、Chevy Volt、Toyata Prius PHVなど)の車の実際の使用データの提供をメーカーに要請するとしており、またCARB自身もこれらのPHEVとガソリンエンジン車など複数車を保有する家庭の使用状況を研究するとしているので、これらの実使用データの集積・分析が関連規制の評価・改良に繋がることが期待される。
BEVxのZEVクレジットのポイント
ZEVを販売した時に与えられる1台当たりのクレジット・ポイントは2012年から2017年まではZEV基準文書から抜粋した左の表の如く決められている。この中で、電池による航続距離(EPAにより定められた試験条件の”UDDS”による距離)が75マイル以上100マイル未満のBEVxはType1.5xに分類され、航続距離が100マイル以上のBEVxはTypeIIxに分類されて、それぞれ2.5ポイントと3ポイントが与えられる。なお、BEVxは2012年より前は定義されていなかったのでn/a(該当せず)と記されている。
2018年以降はZEVのクレジット・ポイントの計算方法が変わり、CARBのZEV基準文書から抜粋した右の式にUDDS試験条件による航続距離を入れて計算することになる。式の注釈に書いてあるように航続距離が50マイル以下は0ポイント、航続距離350マイル以上は4ポイントで頭打ちとなる。
CARBの2017年以前のZEV基準の文書” ZERO-EMISSION VEHICLE STANDARDS FOR 2009 THROUGH 2017 MODEL YEAR PASSENGER CARS, LIGHT-DUTY TRUCKS, AND MEDIUM-DUTY VEHICLES”の最新のものはここで確認できる。
CARBの2018年以降のZEV基準の文書” ZERO-EMISSION VEHICLE STANDARDS FOR 2018 AND SUBSEQUENT MODEL YEAR PASSENGER CARS, LIGHT-DUTY TRUCKS, AND MEDIUM-DUTY VEHICLES”の最新のものはここで確認できる。
カリフォルニア州でのBMW i3 REx、BEVxかTZEVか?
BMW i3は2013年9月から量産が開始され欧州などでは11月から販売が始まっているが、好調な注文により2014年4月のBMWの発表では日産70台から100台への増産により初めの頃の想定の2倍の年2万台の生産ペースになっている。また、2014年4月のニューヨーク国際オートショーでは、BMW i3の基盤から新構築した設計、斬新なルート計画手法、環境に優しい構成材料などが評価されて、世界グリーンカー・オブ・ザ・イヤーと世界カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
上で引用したBMW Blogおよび2014.4.24付けの別のBMW Blogの記事から、米国カリフォルニア州でBEVxとして販売されるBMW i3 RExについては、燃料タンクの容量が2.4ガロンから1.9ガロンに減量のほか、エンジンは電池のSOCが6.5%以下まで低下した時に作動開始、RExエンジンは電池の充電には使用されず70MPH(113km/h、この速度の制限はソフトによる制限)までの巡航に十分なパワーがある、BMWの電池の保証(Warranty)は8年10万マイル(容量70%以上)だがCARB states(カリフォルニア州および同様な政策をとっている州)では10年15万マイル、電池は全体の交換を必要とせずモデュール交換が可能、など興味ある新しい情報が出ている。
CARBのお膝元カリフォルニア州ではBEVxカテゴリー最初のBMW i3 RExへの関心は高いようだ。しかし、i3 REx がHOVレーン(規定人数以上が搭乗している車のみ走行可能な車線、ステッカーがあると一人乗車でも通行可)のステッカーの種類(BEVは白、従来のPHEVはグリーン)のどちらになるかで議論がありグリーンに決まると見られているが、グリーンステッカー(制限枚数4万枚)の残数が少なくなっている2014年3月時点でも未だ決定がなされていない。また州によるクリーン自動車補助金の額など本格販売が迫っている4月下旬まで未定となっていた。
HOVレーンのグリーンステッカーについては、4月28日に発表されたCARBのリストにBMW i3 RExが掲載され決定した。この時点で4万枚のステッカー残数が350枚程度になっていたが、カリフォルニア州議会がグリーンステッカー4.5万枚の追加発行(合計8.5万枚)の法案の審議を始めており、BMW i3 RExなどのPHEV新購入者はいずれステッカーの支給を受けられることになりそうである。
このCARBによるステッカーのリストにおけるBMW i3 RExの車種分類はChevy VoltやToyota Prius PHVと同じ「TZEV」になっており、これまでの話のようなZEVに準じる「BEVx」とはなっていない。これは現在手続き中のBMW i3 RExの仕様がCARBによるBEVxの下記条件を満たしていない(例えば、CD距離が75マイル以下、燃料タンク容量が大きいためにAPUによる走行距離がCD距離以上になる?)ためと想像される。
1.CD距離は75マイル(120.7km)以上
2.APUによる走行距離はCD距離以下
3.APUは電池SOCが設定値以下で作動
4.SULEV排ガス基準とエバポ排出ゼロ基準に適合
一方、BMW i3 RExの購入者が受け取れるカリフォルニア州のクリーン自動車リベートプログラム(CVRP)による補助額はBEV(電気自動車)などのZEVと同額の$2500に5月1日に決定した。事前の予想ではPHEVなどのTZEVが受け取れる$1500の補助と見られていた。これでBMW i3 RExの購入者は、連邦政府の$7500の税クレジットと合わせて$10,000の補助が受けられる。
上のような経緯を見ると、BEVxというTZEVとZEVの中間の新しいカテゴリーの車が導入されるまでに、クリーン自動車推進のカリフォルニア州(CARBなど)と新車種開拓の自動車メーカーのBMWとの間で多くの折衝や調整があったことが想像される。
なお、米国でのBMW i3 BEVは5月上旬納車開始、BMW i3 RExは5月下旬に納車開始。
EPAの審査値:BMW i3 RExは「BEVx」の条件を満たせず
2014年5月下旬、BMW i3 RExのユーザーへの引き渡しが始まり、新車に掲示が義務づけられているウィンドウステッカー(左の写真)からEPAの燃費関連審査値が明らかになった。
ウィンドウステッカー記載のEPA燃費関連審査値から判断すると、BMW i3 RExは以下に示すようにCARBによる「BEVx」の条件を満たしていないことが判る。
① 外部充電によるEV走行距離(”All Electric Range”)は72マイルとなっており、「外部充電による走行距離(CD距離)は75マイル(120.7km)以上とする」の条件に合わない。
② 外部充電による走行距離にガソリンによる走行距離を足した全航続距離は150マイルと読めるのでガソリンによる走行距離は78マイルとなり、「APU(レンジエクステンダーエンジン)による走行距離はCD距離以下とする」の条件に合わない。
BMW社は、今回のBMW i3 RExのカリフォルニア州での発売に際してBEVxとしての登録を想定していたようだが、上記のようにBMW i3 RExは「BEVx」の条件を満たしていないために、VoltやPrius PHVなどのPHEVと同じ「TZEV」に分類されたと考えられる。2018年からのZEV規制に備えてBEVxを開発してきたBMWとしては、それまでにBEVxの条件に適うように仕様変更するものと考えられる。
BMW i3 RExのウィンドウステッカーに記載のデータからEPAの燃費関連審査値(CityとHighwayを加重平均した"Combined"「複合」データ)をkmおよびリッター単位に換算して右の表に示す。
この表には、レンジエクステンダーRExと並べて電気自動車BEVの値も示した。RExではBEVよりEV走行の電費が6%低くなっている。RExでは電池SOCが約6%まで低下してからエンジンが始動するために外部充電によるEV走行距離は電費の低下と合わせて約11%ほど短かい130kmになっている。
この表にはまた、BMW i3のRExとBEVの国土交通省によるJC08モードの審査値も示した。JC08モードでは、RExの電費低下は8%、外部充電によるEV走行距離は14%ほど短くなっている。なお、電池の容量はカタログより大きい22.4kWh、エンジン始動開始の電池SOCは6%となる。
JC08モード燃費とEPA複合燃費の値を比較すると、電費は1.67倍~1.72倍、燃費は1.65倍とJC08の電費・燃費はEPA複合の値よりも格段に良い値を示している。これは、EPAではユーザーの実際使用条件で達成可能な燃費を提示するための「調整」を行なっているため。EV走行に関する「0.7ファクター」のような「調整手順」についてはこのブログの「米国EPAのユーティリティファクターとPHEVテストデータ: メモ」の項を参照されたい。
BMW i3 RExは「ほぼ電気自動車」、日本に向いたBEVxは?
BMW i3 REx のEPAによるEV走行距離72マイル(116km)から、米国の平均的ユーザーの電力走行割合は83.3%(左の図のSAEによる米国のMDIUFの値)となる。ZEVの新カテゴリー「BEVx」ではEV走行距離は75マイル(120.7km)以上が条件となっているのでBEVxの電力走行割合は84.2%以上となり、近距離走行を目的に購入される場合が多いBEVxで今後自宅での充電以外に勤務先など目的地での充電機会が増加していくことを考えると、実際の電力走行割合はさらに高くなり、「ほぼ電気自動車」と言えそうである。
日本でのBMW i3 RExでは、国土交通省審査値のEV走行距離196.1kmに相当するユーティリティファクター(UF)は0.958となり、これから「プラグインハイブリッド(複合)燃料消費率」を算出すると、27.4 [km/L] / (1-0.958)=652 [km/L]なので、実に652 km/Lという大きな値になる。国土交通省では、PHEVの「プラグインハイブリッド燃料消費率」表示の取り止めを決めたようで、日本のBMW i3 RExの仕様表にはこの燃費の項目は載っていない。
JC08モードの燃費は実用燃費との乖離が大きく、EPAの複合燃費が日本の実用燃費に近いので、BMW i3 REx のEPA複合のEV走行距離72マイル(116km)を用いて国土交通省規定のUFを求めると0.88となり、日本の実用燃費ベースでも電力走行割合88%の「ほぼ電気自動車」と言うことができる。
CARBによるBEVxの要件の75マイル(120.7km)のような長いEV走行距離になると、ユーティリティファクターの曲線から判るように電力走行割合の増分に対して電池容量の増分が大きくなるために費用(電池容量)に対する効果(電力走行割合)から考えて得策ではない。BEVxの特長を活かしたレンジエクステンダーを日本で導入するとしたら、UF=0.7~0.8辺りが一つの狙い目と考える。
例えば;
電池容量:12 kWh(参考:BMW i3 22 kWh、LEAF 24 kWh、Outlander PHEV 12 kWh)
EV走行消費電力量:11.28 kWh(SOC 6%の時にレンジエクステンダーエンジン始動)
EV走行電費:6 km/kWh(想定実用電費)
EV走行距離:68 km(11.28 kWh x 6 km/kWh)
UF:0.73(国土交通省規定のUF曲線による、軽自動車の走行パターンではUFの図からUF=0.89)
ハイブリッド燃費:17 km/L(想定実用燃費)
燃料タンク容量:15 L(200km走行後のタンク残量約20%)
エンジン:小型30 bhp程度(参考:BMW i3 REx 36bhp、マツダ・デミオ・REレンジエクステンダー 29.5 bhp)
このような仕様のBEVxならば、購入費用はそれほど高くなく、ガソリン消費量は大幅に減り(1/4程度)、エネルギー費用は安くなり、電欠などの航続距離不安がなく、通勤・買物などの近距離のほか中長距離ドライブに使用可能なので一家または一人1台持ちの場合にも適するなど、利点が多い。
注: 本稿は2014年4月上旬から6月上旬にかけてBMW i3 RExの米国への導入状況を中心に、BEVxに関わる進展をフォローして書き足してきた。今後、大きな進展があれば本稿への追記または別項として記載する予定である。
関連事項として「プラグインハイブリッド車の燃料消費率 -- BMW i3 REx に見る日本・EU・米国の差 -- 652km/Lと166km/Lと37.4km/L」をここに掲載した。(2014.09.09)
追記1:BMW i3 RExの このロードテストビデオは優れもの!!
BMW i3 REx について知りたかったら、この「Alex on Autos」のビデオは秀逸。
この車について知りたいことを全て、流れるような英語で説明する。英語が判らなくても、必要なポイントは画面に説明が出る。普通のロードテスト番組とは違い、密度の濃い29分20秒。
(2015.05.30)
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