ホンダ・アコードPHEVのプラグインハイブリッド燃料消費率
米国で昨年(2012年)11月に「2014 Accord PHEV」として仕様が発表され、本年(2013年)1月から販売されていたホンダの「アコードPHEV」の日本での発売が発表された。メーカー発表の諸元(下表)を見ると燃費の優れたセダンで、既発売のプリウスPHVやアウトランダーPHEVと合わせてユーザーの選択肢が拡がったが、当面は法人・官公庁向けのリース販売のみとなっている。
以下、このアコードPHEVのプラグインハイブリッド燃料消費率など燃費関連データについて考察してみる。
1.ホンダ・アコードPHEVのプラグインハイブリッド燃料消費率
充電電力使用時走行距離(充電電力で走行している領域においてエンジンが作動しない全電力走行の場合はEV走行換算距離(等価EVレンジ)と同じ値になる)が37.6kmなので、これからユーティリティファクター(略してUF、電力走行距離割合)を計算することになる。
日本の自動車の走行データに基づくユーティリティファクター(UF)の値としては、①筆者が2007年に導出したものと、②国土交通省が2009年に提示したものがある。下の図は、外部充電電力による走行距離(EV走行換算距離)を横軸にユーティリティファクターを縦軸にとって関係を示したもので、①「堀」の値は2004年自動車輸送統計報告書から全国の自家用乗用車・登録自動車(小型車・普通車)を対象として導出したもの、②「国交省」の値は「JCAP自動車使用実態調査より」と記載されているが対象車種などの詳細は示されていない。
アコードPHEVのEV走行換算距離の37.6kmからユーティリティファクターUFを上記国土交通省の実施要領(国自環第85号、2009年7月)記載の式から算出するとUF=0.58795となる。
アコードの場合、充電電力で走行している領域(プラグインレンジ、CDレンジ)でも走行負荷によってはガソリンエンジンが作動するパラレル型(Blended)PHEVであるが、JC08モードではガソリンエンジンの作動はなく「専ら外部充電による電力により走行」する「AE(All Electric)モード」であったので、下記の計算式によって、プラグインハイブリッド燃料消費率が算出される。*
プラグインハイブリッド燃料消費率=ハイブリッド燃料消費率/(1-UF)
アコードPHEVの数値を入れると、 [プラグインハイブリッド燃料消費率=29.0/(1-0.58795)=70.4km/L] と計算される。
*注: 「ユーティリティファクター」や「プラグインハイブリッド燃料消費率」の算出については、別記事の「走行パターンとプラグインハイブリッド車の燃費特性 その1.国土交通省によるPHEV燃費測定・表示の要領」で解説をしている。
なお、ユーティリティファクターおよびプラグインハイブリッド燃料消費率の導出においては、①使用した統計の母集団の平均と同じドライブパターン*の走行、②充電は1日1回で走行は満充電の状態から開始の条件を想定している。
*注: 「ドライブパターン」とは「1日あたりの走行距離の頻度分布」でこちらの図のようにドライブパターンのデータからユーティリティファクターが求まる。
国土交通省がPHEV用に定義した代表的表示燃費の「プラグインハイブリッド燃料消費率」(「複合燃料消費率」とも呼ぶ)は、充電電力とガソリンの両方を消費して走行した全距離(km)を消費したガソリン量(L)のみで割った値であることに注意が必要である。すなわち、外部充電に要した電力消費量は計算に入っていない。(PHEVのユーティリティファクターと燃費に関する一般的問題についてはこちらの記事の注記1を参照)
2.PHEV3機種の燃費関連データの比較とPHEV代表燃費表記の課題
一般にPHEVが大きなバッテリーを搭載すると外部充電電力による走行距離の割合が大きくなり、ガソリンを消費してハイブリッド走行する距離の割合が小さくなる。国土交通省定義の「プラグインハイブリッド燃料消費率」はガソリン消費量のみで全距離を割って算出し電力消費は計算に入ってないので、搭載するバッテリーの容量が大きくなると、プラグインハイブリッド燃料消費率の値は大きくなる。プラグインハイブリッド燃料消費率には、バッテリー容量(正確には一充電消費電力量)のほかに電力消費率とハイブリッド燃料消費率の値も影響する。
右表は国内で販売されている3機種のPHEVの燃費関連のデータを比較したもの。
トヨタのプリウスPHVは4.4kWh容量のバッテリーを搭載してEV走行換算距離が26.4kmなので、ユーティリティファクターは0.48となり48%の距離を外部充電電力で走行する。プラグインハイブリッド燃料消費率は、残りの52%の距離をハイブリッド走行するために消費するガソリン量で全走行距離を割るので61.0km/Lと計算される。
ホンダのアコードPHEVは6.7kWh容量のバッテリーを搭載してEV走行換算距離が37.6kmなので、ユーティリティファクターは0.59となり59%の距離を外部充電電力で走行する。プラグインハイブリッド燃料消費率は、残りの41%の距離をハイブリッド走行するために消費するガソリン量で全走行距離を割るので70.4km/Lと計算される。
三菱のアウトランダーPHEVは12kWh容量のバッテリーを搭載してEV走行換算距離が60.2kmなので、ユーティリティファクターは0.72となり72%の距離を外部充電電力で走行する。プラグインハイブリッド燃料消費率は、残りの28%の距離をハイブリッド走行するために消費するガソリン量で全走行距離を割るので67.0km/Lと計算される。
右表には記載してないが、GMのレンジエクステンダー型PHEVのボルトは16kWh容量の大きなバッテリーを搭載しているので、この2013年型をもし日本に持ってきてJC08モードで走行させた場合はユーティリティファクターが0.83程度になると想定され、83%の距離を外部充電電力で走行する。プラグインハイブリッド燃料消費率は、残りの17%の距離をハイブリッド走行するために消費するガソリン量で全走行距離を割るので141km/Lという大きな値に計算される。
この表のプラグインハイブリッド車3機種は、いずれもプラグインハイブリッド燃料消費率が60km/L 以上と通常のエンジン自動車の燃費とはかけ離れた値になっており、一般ユーザーにとってその意味を理解し難い場合がある。このプラグインハイブリッド燃料消費率は、平均的ドライブパターン(厳密には、ユーティリティファクターを導出するのに使用した統計の母集団の平均ドライブパターンと同じようなドライブパターン)のユーザーが1日1回の充電で満充電から走行開始する場合にこの値で全走行距離を割ると消費するガソリン量になることを意味している。*
*注: ただし、JC08燃費の実用燃費から乖離の問題があり、実用燃費・電費がJC08燃費・電費の2/3と仮定するとEV走行距離(ユーティリティファクター)とハイブリッド燃料消費率の両方が下がるので、実用のプラグインハイブリッド燃料消費率はJC08の半分程度に下がる。
ただ、プラグインハイブリッド車が大容量のバッテリーを搭載して走行距離の過半を外部充電電力で走る時に、プラグインハイブリッド燃料消費率にその電力消費量が含まれていない点は代表的燃費として問題がないとは言えない。この課題については別記事において考察し代表的燃費表示のための方法を検討している。
| 固定リンク
「自動車」カテゴリの記事
- EV普及の代償 -- 「重量化」がもたらす見えないコスト(2026.01.12)
- 大型トラックでも主役は電池 -- 「最後の砦」だった水素は少数派のまま(2025.09.21)
- 中国、電気自動車の販売台数がエンジン自動車を超える(2024.08.09)
- 「電気自動車の効率改善を評価する」 -- EPRI・NRDCのレポート(2024.04.12)
- 世界各国の自動車のパワートレインやニーズに関する意識(デロイトによる調査)(2024.04.03)



コメント