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2013年1月

プラグインハイブリッド車:目的地への距離による電池SOCの計画制御(追記1)

Soccontrolkeisanrei22009年にこのブログに「続・充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法」(2009.12.24記載)として、「目的地への距離に基づいてプラグインハイブリッド車の電池充電率を計画制御する」方法について書きましたが、最近(2012年11月)これと同様のアイディアの「EV+」をFord社がC-MaxとFusionのPHEVとHEVに標準装備し、特許を申請したと発表しました。(上記ブログ記事の追記1を以下再録して解説します)

筆者提案の方法

プラグインハイブリッド車のユーザーがカーナビに指定した目的地が充電可能な場所である場合、車が目的地に到着した時に自動車駆動用電池の充電率(State of Charge, SOC)が許容最低の値になるように、電池充放電計画を計算してSOC制御を行えば、プラグインハイブリッド車のエンジンによる駆動距離を小さくすることが出来、系統充電による電力走行距離を大きくすることが出来ます。

この設定した目的地への距離によりSOC制御を行う方法は制御プログラムの追加のみで費用はあまり掛からず、ハイブリッド走行(CSモード)にかかる距離すなわちEV走行(CDモード)を超える距離を運転するトリップ毎に一定の効果が期待できます。それ故、この方法をメーカーが装備・提供しユーザー設定で使用可能にすることにより、ガソリン使用量減少・CO2排出削減・ユーザー費用節減などの効果が期待できます。(右の表はSOC計画制御の効果の試算例、詳しくは上記ブログ参照)

Ford社の方法

Cmx13_models_detailflip_smartgauge米国のFord自動車がこのアイディアと同様の機能の特許を申請し、PHEVのFord C-Max EnergiとFusion EnergiおよびHEVのFord C-MaxとFusionに「EV+(plus)」(イー・ヴィー・プラス)と名付けて標準装備しました。

「EV+」はGPS によりHEV・PHEV が家に近づくと自動でEV モードになり、HEV では排ガスや音なしで走行でき、PHEV では筆者の上記アイディアと同様に充電場所にSOC 最低で到着できるのが特長。Ford社は「車上データの活用により車をより賢くする探索の最初の例」と言っています。

左の写真は「SmartGauge®」、EV+はこの一部でFord社がメーカー装備としている通信・エンタメシステムの「Ford Sync®」にGPSを組み込み位置同定を行なってSOCを制御するアルゴリズムを動かしているそうです。
(Ford社のプレス発表による)

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プラグインハイブリッド車の最適電池容量 -- ユーザー各人のドライブパターンを知る

プラグインハイブリッド車は、電気自動車とハイブリッド車の両方の特長を持っており、その燃費性能は次の3つの数値で表すことができる。
 ① 充電した電力で何km走るかという充電電力使用時走行距離、
 ② 電力走行時に1kWh電力で何km走るかという電力消費率、
 ③ ハイブリッド走行時の1リッターのガソリンで何km走るかというハイブリッド燃料消費率

例えば、トヨタ・プリウスPHVの燃費性能(国土交通省審査値)は次のようになっている。
 ① 充電電力使用時走行距離: 26.4 km、
 ② 電力消費率: 8.74 km/kWh、 
 ③ ハイブリッド燃料消費率: 31.6 km/l

また、三菱・アウトランダーPHEVの燃費性能(国土交通省審査値)は次のようになっている。
 ① 充電電力使用時走行距離:60.2 km、
 ② 電力消費率:5.90 km/kWh、 
 ③ ハイブリッド燃料消費率:18.6 km/l

一般に自動車の燃費は、ガソリン1リッター何kmという値で表すのが普通なので、プラグインハイブリッド車についても、上の3つの燃費性能を一つにまとめた「プラグインハイブリッド燃料消費率」(複合燃料消費率)という値を国土交通省が定義しており、この燃費もメーカーのカタログに掲載されている。プリウスPHVの場合はこの値は61.0 km/l、アウトランダーPHEVの場合は67.0 km/lとなっている。

Ufcomparemlitandhori2j系統電力とガソリンの2つのエネルギーにより走行する場合に、どちらをどのくらい消費するかは、充電と充電の間に走る距離によって変わる。国土交通省では、日本の自動車が1日あたり走行する距離の統計データをもとに、プラグインハイブリッド車の電池容量と充電電力走行距離の全走行距離に占める割合の関係を提示している。は、プラグインハイブリッド車の電池容量によってきまる充電電力による走行距離(横軸)と電力走行距離割合(「ユーティリティファクター」と呼称、縦軸)の関係を示したもの。 

「プラグインハイブリッド燃料消費率」は、このユーティリティファクターとプラグインハイブリッド車の燃費性能を用いて次式で計算することになっている。(ただし、外部充電電力走行時にエンジン駆動が加わる所謂「ブレンド走行」の条件では別の式)

プラグインハイブリッド燃料消費率 = ハイブリッド燃料消費率/(1-ユーティリティファクター)

プリウスPHVの場合は充電電力使用時走行距離=26.4kmなので図からユーティリティファクター=0.483となりプラグインハイブリッド燃料消費率=61.0 km/l になり、アウトランダーPHEVの場合は充電電力使用時走行距離=60.2kmなので図からユーティリティファクター=0.723となりプラグインハイブリッド燃料消費率=67.0 km/lになる。

因みに、上記国土交通省のプラグインハイブリッド燃料消費率はガソリン消費量のみに着目し電力消費は含めてないが、米国環境省のプラグインハイブリッド車の燃費表示は電力消費量を熱量的に等価のガソリン量に換算・加算した等価燃費を使用している。ガソリンと電力のエネルギー等価性を考慮したプラグインハイブリッド燃料消費率の表示に関する考察はここに提示している。

さて、このプラグインハイブリッド燃料消費率は、あくまでも日本の平均的ユーザーのドライブパターン(1日あたりの走行距離の頻度分布)と同じ場合に当てはまるもので、個々のユーザーには其々のドライブパターンがある。

460020_2自動車関連の情報・サービスを提供する総合自動車ニュースサイトの「レスポンス」の三浦編集長のプリウスPHVの場合について計算してみよう。Miuras_phv3_driving_patternレスポンスの2012年8月の【PHVオーナーの夏】「妻は30kmのEVモードを望んでいる」の記事に出ていた111日間の走行距離のデータ(表)を1日走行距離(距離範囲の中点を使用)の累積頻度で整理すると、右図のようになる。三浦家の場合、1日の走行距離が30km以内の日が全体の2/3を占めているが、一方で200km~600km走行の頻度が5%以上あり、日本平均と比較するとこの図のさらに長距離側の割合が多く「長距離走行型」と言える。

Miuras_uf2このドライブパターンから、三浦家のユーティリティファクターを求めてみると(計算方法はここの「走行パターンとユーテリティファクター」の項参照」)、左図に示すように同じ容量の電池を搭載した場合に電力で走行する割合が日本平均より少なくなる。ただし、通常のユーティリティファクターの算出では充電は1日1回で満充電から走行開始と仮定しているので、三浦家のように出先で継ぎ足し充電をする場合は電力走行割合は図の値より高くなる。

三浦家の場合、どの程度の電池容量がコストパーフォーマンス的に最適かは、電池コストなどを入れて評価する必要があるが、ユーティリティファクターのカーブの形から見て三浦夫人が希望する30~40kmが一つの選択肢と言えそうである。

レスポンスの三浦家のデータはPHEVでの111日間の記録であるが、別掲のMH氏の457日間のドライブパターンのデータのように長期になると推定の信頼性が高まる。MH氏のドライブパターンとそれから求めたユーティリティファクターを下の3つの図に示す。なお、ドライブパターンを求めるにはその人の1日あたりの走行距離の分布を知ることが出来れば良いのでプラグインハイブリッド車で取る必要はなく、今乗っているエンジン自動車などで取れば良い。

Mhfig2_3Mhfig3_2Mhfig4_2

プラグインハイブリッド車は将来、搭載する駆動用電池の容量をオプションで選択できるようになることが考えられ、その時のためにユーザーは自分のドライブパターンを把握しておくことは有用と考える。(別掲記事の追記2)

このためには、今乗っている車(PHEVである必要はない)の1日あたりの走行距離を記録しておけば良い。それにはカーナビに1日あたりの走行距離記録機能を装備したり、あるいはスマートフォンを利用してそのような記録サービスを提供したり、あるいは車のCANデータから1日あたり走行距離の記録・利用を可能にするなどの方法がある。

ユーザー個人のドライブパターンが判れば、ユーザーが将来プラグインハイブリッド車を購入する際に最適の電池容量を知ることでき、また標準搭載の電池容量でどのくらいの燃費が期待できるかを知ることができる。これについては筆者が数年前から自動車技術会などで提案しており、自動車メーカーは出来るだけ早く新車および既販売の自動車でデータ取得を可能にして将来のプラグインハイブリッド車ユーザーにサービスすべきと考えている。これはまたユーザーの囲い込みにもなると思う。

なお、ユーティリティファクターやカタログ燃費値(国土交通省審査値)はJC08モード基準なので実用燃費とは相当乖離していることに注意が必要である。上の方法でユーザーが最適電池容量を求める際には実用燃費性能で評価する必要があり、その際にはCarlifeNaviの「マイカー管理」や「e燃費」のデータは各人の実際の燃費を推測する上で役立つものと考えている。

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バイオマス・原子力協働プロセスによる大気中炭酸ガスの削減

私は2007年頃から「バイオマス・原子力協働プロセスによる大気中炭酸ガスの削減」について研究を行っており、その結果を木質炭化学会米国原子力学会革新的原子力技術国際会議日本原子力学会などに発表してきました。

Horiessaynucleachar
「エネルギーレビュー」誌の2012年12月号に掲載した上記 「原子力で炭焼き」 と題する随筆はこのコンセプトの趣旨を書いたもので、技術的内容については下記のペーパーに英文で説明してあります。(興味のある方にはPDFファイルをメール添付でお送りします。)

Hori, M., “Nuclear Carbonization and Gasification of Biomass for Effective Removal of Atmospheric CO2”, Progress in Nuclear Energy (Published by Elsevier) Volume 53 Issue 7, p.1022-1026 (September, 2011)

このコンセプトの日本語での説明を以下に示します。これは日本原子力学会「2012年春の年会」(福井大学文京キャンパス 2012年3月21日)で発表した予稿を編集したものです。


Globalcarboncyclejバイオマス・原子力協働プロセスの地球規模炭素循環における効果

バイオマス・原子力協働プロセスを用いて、植生・土壌中のバイオマスなどの有機炭素を固体炭素化および燃料化することによる地球規模炭素循環への効果と、このプロセスに必要な原子力供給量とその供給可能性を示す。

1.大気中炭素の削減
 地球温暖化を抑制するために人為起源CO2の排出削減策が国際的に進められている。
 最近の研究では、大気中炭素量の2倍以上の炭素を含む永久凍土の[大気温度上昇→融解→CO2放出]の正フィードバックによる温暖化の加速的進行が示されており、大気中炭素量の削減は喫緊の課題となっている。

2.バイオマス・原子力協働プロセス
 本プロセス(下図)は、原子力熱を利用して、植生・土壌中のバイオマスを炭化する反応とその際発生する気化物を水蒸気ガス化する反応から構成される。
 炭化プロセスで生成する安定固体炭素の材料利用・貯留と、ガス化プロセスで生成する合成ガスの燃料化による化石燃料代替の両方の効果によって、地球規模炭素循環における大気中への炭素放出量の削減が可能になる。
 プロセスに必要なエネルギーを原子力から供給することは、炭素の転換率を最大にする効果がある。

Nuclearbiomassprocessj3.炭素循環への効果と必要原子力供給量
 参考ケースとして光合成による炭素固定量の1/10(年6Gton炭素)を本プロセスで処理する場合、年2.7Gtonの炭素を安定固体として循環から除き、年2.2Gtonの合成燃料を化石燃料代替することができるので、大気中炭素量は長期的に減少していく。
 この場合の必要原子力供給量は石油換算年1.7Gtonで、プルトニウムのリサイクル利用を適時導入すれば世界エネルギー会議・Bケースの発電に加えて本プロセスへの原子力供給は可能となる。
 なお、大量の炭素・黒鉛材料が製造されるので、現在の工業用以外に農林業(Biochar)・建設業(黒鉛構造材)などへ用途が拡がる。

4.地球環境復元の作業
 ①大気中炭素をバイオマスの炭化によって安定化することは、古生代にバイオマスが地熱で炭化して生成した石炭などの化石燃料を、人類が燃焼してCO2を排出してきたことに対する「復元」の作業である。これまでの人為起源CO2排出は地球規模のものなので、これに対する復元作業は当然、地球規模の大規模なものになる。
 ②処理するバイオマスには、森林などの木質(植生、土壌)のほか、栽培エネルギー植物(陸上、海中)や融解永久凍土などもある。
 ③実際に処理する規模は、地球温暖化の深刻度、実施中のCO2の排出抑制策の効果、生態系への影響などを評価して判断することになる。

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