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メモ: 三菱アウトランダーPHEVの「複合燃料消費率」など

Btn_phev2009年頃からコンセプトが発表されていた三菱アウトランダーPHEVがいよいよ2013年1月に発売されことになりました。SUVと4WDが特徴的なプラグインハイブリッド車で、新しい機構もあり、楽しみな車です。

三菱自動車のアウトランダー予約受付開始のプレスリリースから、PHEV特有の複合燃料消費率の計算方法やその他気の付いた点をメモしました。

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1.アウトランダーPHEVの複合燃料消費率の計算方法

上の諸元表でEV走行可能距離(充電電力走行距離、CDレンジなどとも呼称)が60.2kmなので、これから電力走行距離割合(ユーティリティファクター、略してUF)を計算することができます。

Ufcomparemlitandhori2j日本の平均的ユーザーを対象とするユーティリティファクターUFについては、筆者が2007年に導出したものと、国土交通省が2009年に提示したものがあります。左の図は、電池による充電電力走行距離を横軸に、UFを縦軸にとって、その関係を示したものです。なお、この図で、「堀」の値は国土交通省の2004年自動車輸送統計報告書より自家用乗用車・登録自動車(小型車・普通車)を対象として導出したもので、「国交省」の値は「JCAP自動車使用実態調査より」となっていますが対象車種などの詳細は示されていません。

アウトランダーPHEVのEV走行可能距離の60.2kmから、国土交通省提示のユーティリティファクターUFを求めると、UF=0.7229(この計算は国土交通省提示の近似式から計算)となります。

複合燃料消費率は、この場合CDレンジを全部電力で走行するモード(AEモード)と考えられるので、計算式は、
  複合燃料消費率=ハイブリッド燃料消費率/(1-UF) となり、
  複合燃料消費率=18.6/(1-0.7229)=67.1km/L と計算されます。
この値は、上記諸元表の67.0km/Lとほぼ一致しています。

ここで注意しなければいけないのは、国土交通省がPHEV用に定義した「複合燃料消費率(「プラグインハイブリッド燃料消費率」とも呼ぶ)とは、充電電力とガソリンの両方を消費して走行した全距離(km)を消費したガソリン量(L)のみで割った値です。すなわち、電力の消費量は計算に入っていません。(PHEVのユーティリティファクターと燃費に関する一般的問題については、文末の注記1を参照)


アウトランダーPHEVの場合には、12kWh容量の大きなバッテリーを搭載しているのでユーティリティファクターが約0.72となっていますが、これは平均的なドライブパターン(一日当りの走行距離の分布)のユーザーが使用した時に72%の距離を充電電力で走行するという意味です。この場合は残りの0.28すなわち28%の距離をガソリンを消費してハイブリッド走行しますが、この28%の距離を走行するのに消費したガソリン量で全部の距離を割っていますので、算定された「複合燃料消費率」は67.0km/Lと大きな値になります。

極端な例として、GMのレンジエクステンダー型PHEVのボルトは16kWh容量の大きなバッテリーを搭載しているので、もし日本に持ってきてJC08モードで走行させた場合にユーティリティファクターが0.81程度になると想定され、この場合は19%の距離のハイブリッド走行で消費するガソリン量で算定するので「複合燃料消費率」は126km/Lという大きな値に計算されます。

[追記] 
 2014年発売のレンジエクステンダー型PHEVのBMW i3 RExの「プラグインハイブリッド燃料消費率」を、この2009年の国土交通省実施要領に従って計算すると実に652km/Lという値になる。
 国土交通省は2014年に「プラグインハイブリッド燃料消費率」の表示の見直しを行うことを発表(1,2)しており、BMW i3 RExの仕様表(2014年4月現在の主要諸元)には「プラグインハイブリッド燃料消費率」の項目は記載されていない。また、2014年以前発売の他社のPHEVでも2015年以降のカタログの仕様表には同様に「プラグインハイブリッド燃料消費率」の項目の記載がなくなっている。

一方、トヨタのプリウスPHVの場合は4.4kWh容量のバッテリーを搭載しているので、ユーティリティファクターは約0.48となり、52%の距離のハイブリッド走行で消費するガソリン量で算定するので「複合燃料消費率」は61km/Lと計算されます。

要するに、ガソリン消費量のみを考慮している「複合燃料消費率」の定義では、バッテリーの大きさが「モノを言う」のです。だからと言ってこの「複合燃料消費率」の定義は「意味がない」わけではありません。平均的なドライブパターンのユーザーならば、消費するガソリン量はこの「複合燃料消費率」で全走行距離を割った値になります。これに、充電した電力量を加えた値が走行のための全エネルギー消費量になります。なお、充電電力量の計算には、「電力消費率」(km/kWh)が必要ですが、今回のプレスリリースの上記諸元表には記載されていませんでした。

2.今回の発表で気の付いた点

① いずれ国土交通省審査値が正式に発表されたらカタログなどに記載されると思いますが、「電力消費率」[km/kWh]の値と「一充電消費電力量」[kWh/回]の値は重要な情報ですので、諸元表に含めて頂きたい項目と思っています。

② 上の「アウトランダーPHEV主要諸元(予定)」の表の注釈2に、「一般ドライバーの約90%は、1日の平均走行距離が60km以下。(出典:JCAP自動車使用実態調査)」とありますが、この元の調査の目的、対象とした地域、整理方法、標本数などから、こう言い切ることにどの程度説得性があるか気になるところです。もっとも、上記国土交通省のユーティリティファクターも、使用したデータ数・処理方法、対象車種などの詳細はありませんが「JCAP自動車使用実態調査」から導出したようになっていますので、調査内容を検討した結果ならば問題ないと思います。

③ 急速充電がメーカー・オプションで設定されていますが、PHEVの通常の使い方では急速充電は必要と考えられず、それよりもAC200Vの普通充電(SAE J1772 AC Level 2相当)を現在の15Aから30Aにした方が実質的と思います。米国ではLevel 2のEVSE(車外充電機器)は公共用も含めて30A~32A対応となっており、いずれ日本もこの方向に進むと考えられるので、PHEVとしては大きめの電池を搭載しているアウトランダーに先鞭をつけて頂きたいところです。

追記1: 三菱自動車 新型アウトランダーPHEVを正式発表(2012年12月26日)
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 発売日: 2013年1月24日
 
 価格: 332万4000円~429万7000円。2012年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(上限額43万円)が適用された場合の実質的な車両本体価格は289万4000円から。
 
 仕様: ここ

上記仕様表から燃費・電費などのPHEVの燃料消費関連データを抜粋して右の表に示す。
(2012.12.26)

注記1: PHEVのユーティリティファクターと燃費に関する一般的問題

国土交通省によって規定されているユーティリティファクターやそれを用いたプラグインハイブリッド燃料消費率(複合燃料消費率)の審査値の導出においては次のような仮定を置いています。

 ①規定されているユーティリティファクターは、ある母集団の走行データから統計的に求めており、これらの母集団の平均と同じドライブパターンの車に適用すると仮定している。
 ②規定されているユーティリティファクターは、充電は1日1回で走行は満充電の状態から開始すると仮定している。
 ③ユーティリティファクターの図の横軸の「充電電力走行距離」は「EV走行換算距離」と同じで、EV走行に使用可能な電池容量すなわち「一充電消費電力量」と「電力消費率」の積になるが、この「電力消費率」はJC08モードテストの値であり、得られた審査値はJC08モード値と同じ電費・燃費で走行すると仮定している。

実際の走行はユーザーによって千差万別であり、ユーザーの走行条件次第で実走行燃費は審査値から乖離することになります。このようなPHEVのユーティリティファクターと燃費の問題はアウトランダーに限った話ではないので、別項で議論することにします。この中のプラグインハイブリッド燃料消費率(複合燃料消費率)の定義の妥当性については、「走行パターンとプラグインハイブリッド車の燃費特性 その2. ユーティリティファクターとPHEV燃費表示の課題」の項で考察しています。
(2012.12.26)

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