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GMのボルトのEPA燃費ラベル

Voltlabelv6_slide6GMのプラグインハイブリッド車Chevrolet Volt(ボルト)の米国環境保護庁(EPA)の燃料経済ラベル(Monroney Label、EPA燃費ラベル)が2010年11月に公表された。(これに関するプレスリリーズはここ

ボルトの燃費については、一時GMが燃費「230MPG」(98km/L)と発表して話題(ここの追記2参照)になったが、これでEPAの正式の値が決定した。

ボルトのEPA燃費ラベル(左)の内容は下記。

充電電力走行範囲(CDレンジ)
 充電電力による航続距離: 35 miles(56 km)
 充電電力走行時のガソリン等価燃費: 93 MPGe(39 km/L)
 100 mile走行の使用電力: 36 kWh
 年15000 mile電力走行の電力費用; $ 601

ハイブリッド走行範囲(CSレンジ)
 ガソリンエによる航続距離: 344 miles(553 km)
 ガソリン走行時の燃費: 37 MPG(16 km/L)
 100 mile走行の使用ガソリン: 2.7 gallons(10.2 L)
 年15000 mileガソリン走行のガソリン費用: $ 1302

充電電力とハイブリッド走行の全走行(CDレンジ+CSレンジ)
 全走行のガソリン等価燃費: 60 MPGe(26 km/L)
 全航続距離: 379 miles(610 km)

注: 
 ① ボルトではCDレンジは全部電力で走行(純EV走行)。表記の燃費はEPA Cityモード とEPA Highwayモードの各燃費を「City 55% Highway 45%」で複合したもの。
 ② 電力のガソリン等価燃費MPGeは電力使用量を33.7 kWh = 1 gallonでガソリンに換算したもの。
 ③ 全走行のガソリン等価燃費はユーティリティ・ファクターを使用して充電電力走行燃費とハイブリッド走行燃費を合成したもの。
 ④ ガソリン価格は$3.20/gallon、電力価格は11cents/kWhを使用(何れもEPA燃費ラベルの提示案の段階から変更されている)
 ⑤ 用語、PHEV燃費、ユーティリティ・ファクターなどの解説は、本サイト内の、などを参照されたい。

(注: 以下はEPAテスト結果の詳細を入手してないので推測、今後アップデートする可能性あり)

考察:

① ボルトの電費は、ラベルの「36 kWh/100 miles」からCityとHighwayのCombined(複合)で2.8 miles/kWh、4.5 km/kWhと計算される。これは、リーフのEPA複合電費の4.7 km/kWhと近い。

② ラベルには、ボルトの充電電力走行距離(CDレンジ)35 milesの使用電力は12.9 kWhと記載されている。ボルトの電池は、定格電池容量16 kWhで実質使用範囲は当初は8 kWhであったが、最近の報道では実質使用範囲10.4 kWhで、電池SOC(充電状態)にして20%乃至25%から85%乃至90%の間の65%をCDレンジの走行に使用するとしている。交流使用電力12.9 kWhで電池側使用電力10.4 kWhとすると、充電効率は10.4/12.9=81%となる。

③ 全走行のガソリン等価燃費は、下記の式によりユーティリティ・ファクター(UF)を使用して充電電力走行燃費とハイブリッド走行燃費を合成し、さらにCityとHighwayの値を複合して、"combined composite"の燃費を算出したものと考えられる。

 MPGe(Composite) = 1 / { UF/ MPGe(CD) + ( 1 - UF ) / MPG(CS) }

  MPGe(Composite):全走行合成のガソリン等価燃費
  MPGe(CD) : CDレンジ(電力走行)のガソリン等価燃費
  MPG(CS): CSレンジ(ハイブリッド走行)のガソリン燃費
  UF : ユーティリティファクター

Utilityfactorus2使用したユーティリティファクターは、米国自動車技術会作成の「自動車運行調査データを使用したプラグインハイブリッド車のユーティリティファクターの定義」SAEJ2841(2010年9月発行、有料)に準拠したもの。

実際の計算では、EPAのCity、Highwayなどの各テストサイクルごとに特有のユーティリティファクター(Cycle Specific Utility Factor)を定義して使用する。詳しくは、上記SAE資料およびEPA/NHTSA資料(例えばFederal Register[PDF、約18MB])を参照されたい。なお、ボルトのCDレンジにおける電費などの電気的特性はCityとHighwayで類似しており、両ケースのユーティリティファクターとして大凡0.64が用いられたようである。すなわち、米国の平均的ユーザーがボルトを使用すると全走行距離の64%を純EV走行することになる。

右図はNRELの資料からの抜粋で、図中の”From 2001 NHTS”の線はSAEJ2841と同じく2001年調査の全米自動車走行パターンに基づくユーティリティファクターを示している。横軸の”Driving Distance”はCDレンジ距離、すなわち充電電力により純EV走行の航続距離。因みに、図中の”From AVTA Fleet”の線は米国DOEの先進自動車試験活動の一環としてPHEVフリート車両の走行データを纏めたもので、フリートでは全米自動車平均より走行距離が長い傾向がある。(注: この図の「2001 NHTS」の線から、ボルトの充電電力による航続距離35 miles(56 km)では、ユーティリティ・ファクター(UF)は0.58となるが、前述のようにEPA審査結果ではUF=0.64が用いられている。今回のEPA審査では、2010年9月発行の新しいJ2841規格で定義されている「MDIUF」というユーティリティファクターを使用することになっており、これは図の「2001 NHTS」の値とは異なる。この辺の事情は「走行パターンとプラグインハイブリッド車の燃費特性 その2. ユーティリティファクターとPHEV燃費表示の課題」を参照されたい。)

④ 国土交通省が2009年7月に決定したプラグインハイブリッド車(PHEV)の燃費性能の測定と表示の方法(資料および参考資料)では、PHEVの代表燃費値として「複合燃料消費率(プラグインハイブリッド燃料消費率)」が定義されており、下記の式で計算される。

FC(P) = 1 / { UF/ FC(E) + ( 1 - UF ) / FC(H) }

 FC(P) : プラグインハイブリッド燃料消費率 [km/l]
 FC(E) : 充電電力使用時燃料消費率 [km/l]
 FC(H) : ハイブリッド燃料消費率 [km/l]
 UF : ユーティリティファクター [-]

この「プラグインハイブリッド燃料消費率」の計算において、CDレンジの充電電力使用時燃料消費率には、EPAのような使用電力量を熱量的に等価のガソリン量に換算した値を用いず、CDレンジでエンジンがキックインしてガソリンを消費した場合のみ有限の値になり、エンジンのキックインがない場合はガソリン消費量がゼロなので無限大の値となり、右辺分母の第1項はゼロとなる。

ボルトのEPAテスト結果から、上の式で「プラグインハイブリッド燃料消費率」を求めると、CDレンジが純EV走行のために右辺の分母の第1項がゼロとなり88 MPG(37.5 km/L)という値になる。

この式によるプリウスPHVの「プラグインハイブリッド燃料消費率」審査値は57.0 km/Lとなっている。プリウスはCDレンジでもエンジンから動力を供給するブレンド走行が可能であるが、JC08モードのテスト条件ではエンジンのキックインは生じなかった。

仮にボルトを日本の方式でテストして「プラグインハイブリッド燃料消費率」を出すとすると、日本のJC08モードでは、ボルトのCDレンジ(純EV航続距離)が80 kmを超え、日本の走行パターン基準のユーティリティファクターが0.8以上になる可能性があり、ガソリン燃費の向上と合わせて、「プラグインハイブリッド燃料消費率」は100 km/Lを超えそうである。

もっとも、プリウスPHVも電池容量を今の5.2kWhから増やしていくと考えられる。もしプリウスPHVが今の倍の約10kWhの電池を搭載した場合、EV走行距離が50 kmを超え、ユーティリティファクターが0.7程度となり、「プラグインハイブリッド燃料消費率」が100 km/L程度になることが考えられる。

追記1: 新デザインによる2012年式VoltのEPAラベル

「新車に貼るステッカーの案をEPAが発表、プラグインハイブリッド車用も。広く意見を募集中」のブログで説明したProposed Ruleに対するコメントを入れて、2011年5月EPAは米国で販売される乗用車とライトトラック(SUV、ミニバン、ピックアップトラック)全車の窓ガラスに、貼り付ける新しいステッカーのデザインを公表した。

この詳しい内容については、EPA/NHTSA "Revisions and Additions to Motor Vehicle Fuel Economy Label; Final Rule"(Wednesday, July 6, 2011)と題するFederal Register, Vol. 76, No. 129を参照されたい。

2012voltlabelこの新しいデザインによる2012 Chevrolet Voltのウィンドウステッカーは左図のようになっている。新旧デザインを比較すると、全体に記述が簡略になり、配置も変わり、一般の人に見易いようになっている。

内容的な変更点としては、
 新しいラベルで追加された項目:
  ・平均的新車に対して5年間で節約できる金額を追加(右上)
  ・年間の燃料(PHEVの場合はガソリン+電力)の金額を追加(左下)
  ・燃料経済と温室効果ガスの尺度が1~10の数字と位置で追加(右下)
 前のラベルから削除された項目:
  ・ユーティリティファクターで合成したPHEVの複合燃費(60MPGe)を削除(左下)
  ・Charging Routines(充電間隔による燃費の値)を削除(右下)

なお、ユーティリティファクターで合成したPHEVの「複合燃料消費率」(Combined Composite)は、数値的に明示されないようになったが、年間燃料費用と5年間節約金額は複合燃料消費率を用いて計算されていると考えられる。(注:EPAでは、「Combined」はCityとHighwayの燃費を複合した意味、「Composite」はユーティリティファクターでガソリン燃費と電力消費を合成した意味で使用している。国土交通省では、「複合燃料消費率」はユーティリティファクターでガソリン燃費と電力消費を合成したプラグインハイブリッド車燃料消費率の意味で使用している)

Epafueleconomyleadersまた、このPHEVの複合燃料消費率(Voltの場合60MPGe)は、右図のようにEPAが全車種について燃料経済リーダー車を決めるときに使用されている。
(2012.12.03)

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