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新車に貼るステッカーの案をEPAが発表、プラグインハイブリッド車用も。広く意見を募集中

2010年8月30日、米国の環境保護庁(EPA)と運輸省・道路交通安全局(NHTSA)は、米国内で2012年以降販売される全ての新車(乗用車および小型トラック)に貼ることが義務付けられるウインドウ・ステッカー*の新デザイン案を公表した。このステッカーには、消費者への情報として、燃料消費量、燃料コスト、環境影響の数値が示される。今回は、プラグインハイブリッド車や電気自動車などの先進技術車のステッカー案が初めて追加された。

(* このウインドウ・ステッカーは、一般に"Monroney sticker (label)"と呼ばれている。これは、新車に情報公開を義務付けた「自動車情報公開法」(1958年制定)をオクラホマ選出のMike Monroney上院議員が発案したことに由来)

EPA・NHTSAは、今回の措置は1975年制定・2007年改定のエネルギー政策保全法(EPCA)および2007年制定のエネルギー自立安全保障法(EISA)に準拠し、また2012年ー2016年車対象の温室効果ガス排出(GHG)規則と企業平均燃費(CAFE)基準とも整合したものとして、提案している。

公表したステッカーの案は、従来からあるガソリン/ディーゼルエンジン車、天然ガス自動車(CNG)、代替燃料車(FFV)に、プラグインハイブリッド車2車種、電気自動車を加えて、計6車種について、第1案(ラベル1)、第2案(ラベル2)、代替案(ラベル3)の合計18種類のデザインで、これから2ヶ月間一般や業界などの関係者から意見を募ることにしている。

 ● ラベル1はこれまでのラベルとは異なり、燃料消費と環境影響を総合したA+からDまで11段階の記号と、平均車両に比べて5年間に節約できる(あるいは余分に掛かる)燃料費用の金額を大きく示すデザインになっている。燃費と環境影響の定量的値および他の車との相対的比較を示すスライドバーは下方に配置されている。
 ● ラベル2はこれまでのラベルに似たデザインで、燃費(MPG単位)と1年間に掛かる燃料費を大きく示すデザインになっている。燃費と環境影響の定量的値および他の車との相対的比較を示すスライドバーは下方に配置されている。
 ● ラベル3は、他の案と大体同じ情報を示しているが、燃費と環境影響は結合して1~10のスケールで表しスライドバー上に他の車との相対的位置で示している。
 ● 燃費などの数値の算出には、当面、年間走行距離15,000マイル、ガソリン価格$2.8/ガロン、電気料金$0.12/kWhを使用しており、これらの数値は定期的にアップデートされる。

これらの内容は、EPAサイトに置いてある発表文デザイン案などで概要を掴むことができるが、詳しく知るには「自動車燃料経済性ラベルの改定と追加;提案中の規定」と題するFederal Registerの公告が参考になる。この資料は、ラベル改定・追加の背景・検討経緯とその内容について、それこそ「綿々」と124ページに亘って記述したもので、ラベルのデザインやそれに盛り込む表示内容のみならず、将来EPAウエブサイトに置く予定のさらに詳しい提供情報の内容についても、広く意見を募っている。

この資料を読むと、消費者へ提供すべき、燃料消費、燃料コスト、環境影響などの情報をどのようにして一般に判りやすくするか、米国の行政当局のルール作成の経緯と苦労が判って面白い。

プラグインハイブリッド車のラベルについて

プラグインハイブリッド車のように、ガソリンと電力を使用し、電池が一定の充電状態(SOC)まで放電するまではグリッドから充電した電力で走行し、それ以降はガソリンエンジンによってハイブリッド走行する車では、使用するガソリンと電力の消費量をどのように表示するかが課題である。プラグインハイブリッド車の場合は、さらに、GMのVoltのようなシリーズ型とトヨタのプリウスのようなパラレル型がある。
Epaphevlabel1
Epaphevlabel23シリーズ型は、グリッドから充電した電力で走行する所謂CDレンジは純EV走行をし、ハイブリッド走行に入った後の所謂CSレンジでは航続距離延長のためのガソリンエンジンが始動する型で、この型をGMでは「航続距離延長型電気自動車」の意味で「EREV」と呼んでおり、この資料では「Extended Range(またはEREV)-PHEV」と呼んでいる。パラレル型は、CDレンジでも負荷に応じてガソリンエンジンからの動力をブレンドして走行する型(注1)で、この資料では「Blended PHEV」と呼んでいる。結局、プラグインハイブリッド車のラベルは、この二つを別のデザインにし、3案作成したので、全部で6枚のラベル案(左図、EPAの資料から抜粋)が出されている。(CDレンジ、CSレンジなどについては、本サイトの別項を参照されたい)

この資料には、一般の人は「キロワット時」などの電気の単位が判りにくいことや、ガソリン消費率と電力消費率の両方併記では混乱することなどへの心配から、米国人が長年馴染んでいて判りやすい燃費の単位MPG(Miles Per Gallon、1ガロンのガソリンで走行するマイル数、日本で言う「リッター何キロ」に相当。1 MPG = 0.425 km/L )を、プラグインハイブリッド車や電気自動車にも使用することにした検討の経緯が説明してある。検討の結果は、ガソリン消費率と充電電力消費率を合成した「MPGe」(「e」はEquivalentの略、「等価MPG」)の単位(Metrics)を採用することにしている。

このMPGe単位は米国では、以前から一部で用いられており、また準拠した法律でも示唆されていることもあり、とくに目新しいものではない(注2)。ステッカーでのMPGe単位は、これまで天然ガス自動車で使用されてきたが、今回はプラグインハイブリッド車と電気自動車で電気消費をガソリン換算した燃費として使用することを提案している。この電気をガソリンへ換算したMPGe単位は自動車の燃費性能の情報提示として適切なものかどうか、今後論議を呼びそうである。

以下、プラグインハイブリッド車(PHEV)のステッカー案について、主な点を記す。

① ガソリン・電力の燃費の計算は、自動車への供給量をベースにする。環境影響のCO2排出量も自動車のテールパイプからの排出量で示す。これらをライフサイクルベースで、上流でのエネルギー効率や上流での排出を考慮するという考えもあるが、結局上のように決まった。(注2参照)

② PHEVのMPGeの計算
MPGe = (走行した距離・マイル)/(ガソリン消費量・ガロン+電力消費量のガソリン量換算・ガロン)
ただし、33.7 kWh 電力 = 1 gallon ガソリン*。
燃費のテストは、米国自動車技術会作成の「プラグインハイブリッド車を含むハイブリッド車の排出ガス・燃料経済測定の推奨実施要領」SAEJ1711(2010年6月発行)に準拠。

③ PHEVの走行経費の計算
Label 1およびLabel 2の年走行経費は、CDレンジおよびCSレンジで、それぞれ年15000マイル走行*した場合の年間経費を算出表示。Label 3の年走行経費は、ユーティリティファクター**を使用して米国平均ユーザーの経費を算出表示。5年間の走行経費節約は、ユーティリティファクターを使用して米国平均ユーザーの節約額を算出表示。
ただし、ガソリン価格 = $2.8/ガロン*、電力料金 = $0.12/kWh*。

* これらの値は当面の設定値で、今後定期的にアップデートされる。(前出)
** ユーティリティファクターの値は、米国自動車技術会作成の「自動車運行調査データを使用したプラグインハイブリッド車のユーティリティファクターの定義」SAEJ2841(2010年9月発行)に準拠

注1: トヨタプリウスPHVの日本でのJC08モードによる国土交通省審査の条件では、別項記載のようにグリッド充電電力で走行するCDレンジでエンジン使用がなかったので、パラレル型ではあるがシリーズ型と同じようにCDレンジ全部を純EV走行をする所謂「AER」(All Electic Range)の走行状態になっていた。米国の試験条件("City" testおよび"highway" test)では、負荷条件がJC08の条件と違うので、PHEV制御の設定次第だがCDレンジにおいてもエンジンを使用する所謂"Blend"走行の状態が加わる可能性がある。

注2: 等価MPG燃費「MPGe」の算出には、大別して、次の二つの方法がある。

[1] 自動車の上流側プロセスにおける物質・エネルギー的損失を無視して算出する方法

ガソリンは原油から精製され給油所まで配送されるが、これらの自動車の上流側のプロセスにおける物質・エネルギー損失を無視して、ステーションで給油されるガソリン量をベースにし、電力は各種一次エネルギー(石炭、天然ガス、原子力、水力、石油など)から発電され、送電線を経由して送配電されるが、これらの自動車の上流側における発電の熱効率や送配電のエネルギーロスを無視して壁コンセントから充電のために供給される電力量をベースにし、ガソリンの量をガロンで表し、電力量(kWh)をそのまま熱量として等価の熱量のガソリン量(ガロン)に換算し、このガソリン+電力の合計ガロン量で走行したマイル数を割ってMPGeの値とする。

本EPAのルールでは、この方法で算出することとしており、具体的な数値としては、33.7 kWh 電力 = 1 gallon ガソリンを用いている。ほかに、Automotive X賞(2010年9月に審査決定)でも、この方式で32.8 kWh = 1 gallonにより等価MPG燃費を算出している。これら換算数値が微妙に異なっているのは、ガソリンの発熱量の値が異なっているためで、MJ/Lの単位で示すと、EPAは32.0、Automotive X賞は32.8。因みに日本で普通使用されているガソリン発熱量は32.9(LHV)、34.6(HHV)である。(小数点2桁以下は4捨5入)

[2] 一次エネルギーから自動車までの物質・エネルギー的損失も含めてライフサイクルで算出する方法

ガソリンを原油から精製し、輸送して、自動車に給油されるまでの全プロセスにおける損失を含め、電力は同じく各種一次エネルギーから発電されて自動車まで送配電される全プロセスの損失を含める、所謂「ライフサイクル」解析によって、使用した一次エネルギー量まで遡って評価し、kWhとガロンの換算係数をきめる。

一般に、ガソリンおよび電力が自動車に到達するプロセスにおいては、平均して、ガソリンは一次エネルギーの1割~2割程度のエネルギーを失い、電力は一次エネルギーの6割~7割程度のエネルギーを失う。自動車に供給した以降の、両エネルギーを駆動力に転換してタイヤが地面を蹴るまでのプロセスでは、エネルギーの質が高い電力の方がガソリンより遥かに効率が良い。このようにエネルギーの質の異なる2種のエネルギーの使用量を熱量ベースで換算・加算して燃費評価のベースにすることは、便宜的な方法ではあるが、あまり意味のある方法とは言えない。

一方のライフサイクル解析による方法は、一次エネルギーまで遡って評価して、エネルギー使用量を換算・加算して燃費評価のベースにしているので、エネルギー経済上は意味のある方法と言える。しかし、一次エネルギーの種類で発電効率は大きく異なり、また地域によって、時間帯によって電源構成も異なるので、運用上の難しさがある。

DOEが電気自動車向けに提示しているライフサイクルベースの算出方式は、DOE 10CFR474.3に記載されているが、数値のみを示すと、石油動力アクセサリー(石油加熱のヒーターなど)がない電気自動車の場合は82.049 kWh電力 = 1 gallon ガソリン、石油動力アクセサリーがある電気自動車の場合は 73.844 kWh = 1 gallon としている。

このDOEの等価燃費算出方法は、ライフサイクルベースで合理的に見えるが、元の計算式を見ると、"fuel content" factor = 1/0.15 という係数を使用しており、電力のガソリン等量を小さくして電気自動車の等価燃費(MPGe)が大きくなるようにしている。これは電気自動車導入へのIncentive(報奨・誘導)目的の政策的な値と考えられる。

上記1および2の何れの方法でも、ガソリンは石油ベース、電力は石炭、天然ガス、原子力、水力などがベースであり、元々種類や質の異なるエネルギーの使用量を換算・加算して、燃費として単一の単位(Metrics)で表示するのは、エネルギー評価・経済上の意味合いよりも便宜的、政策的なものと考えた方が良さそうである。(この課題にていての筆者の検討結果はこちらに記載)

注3: 2013年型車から適用する新しいラベルのデザインを発表

2011年5月25日、EPA(米国環境保護局)とNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は、米国で2013年から販売される乗用車とライトトラック(SUV、ミニバン、ピックアップトラック)全車の窓ガラスに、貼り付けられる新しいステッカーのデザインを公表した。これは、上記のProposed Ruleに対するコメントなどを入れて改訂したもので、この詳しい内容については、EPA/NHTSA "Revisions and Additions to Motor Vehicle Fuel Economy Label; Final Rule"(Wednesday, July 6, 2011)と題するFederal Register, Vol. 76, No. 129を参照されたい。

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