走行パターンとプラグインハイブリッド車の燃費特性 その1.国土交通省によるPHEV燃費測定・表示の要領
国土交通省がプラグインハイブリッド車(PHEV)の燃費性能の測定と表示の方法を2009年7月に決定した。これは、「プラグインハイブリッド車排出ガス・燃費測定方法策定検討会」(2008年2月~12月、4回開催)における検討をもとに実施要領を取りまとめ、2009年2月に公開してパブリックコメントを募集していたもので、これらの結果を踏まえて、国土交通省は、排出ガスと燃費測定方法について2009年7月末に「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」等の一部改正を行い(改正概要)、また「プラグインハイブリッド自動車の燃費算定等に関する実施要領」と「プラグインハイブリッド自動車の燃費性能に関する情報提供等の要領について」を日本自動車工業会と日本自動車輸入組合に通達した。
また、PHEVの燃費算定と情報提供の概要は、国土交通省のウエブサイトの資料「プラグインハイブリッド自動車の排出ガス・燃費測定方法について」と参考資料に示されている。これらによると、全走行距離の中の一定の割合を外部電源から充電した電力で走行するPHEVの走行の特徴(左図、出所は上記参考資料)を踏まえて、PHEVの燃費性能を次のように測定・表示することとしている。
① 主として外部充電電力で走行する「プラグイン走行」の距離「プラグインレンジ(充電電力使用時走行距離)」[km]、「プラグイン走行」時の「電力消費率」[km/kWh]および「充電電力使用時燃料消費率」[km/l]を測定する。
② 「プラグイン走行」により充電電力を消費した後の、ガソリンなどの燃料を使用して走行する「ハイブリッド走行」時の、「ハイブリッド燃料消費率」[km/l]を測定する。
③ 上記の測定値から、日本の平均的なユーザーの走行パターンから求めた、全走行距離に対する電力走行の割合「ユーティリティファクター(Utility Factor、貢献割合)」を使用して、PHEVの代表的燃費値としての「複合燃料消費率(プラグインハイブリッド燃料消費率)[km/l]」を計算する。
国土交通省は、上記通達「プラグインハイブリッド自動車の燃費性能・算定等の要領」の中で、「複合燃料消費率(プラグインハイブリッド燃料消費率)」を計算する際に必要な「ユーティリティファクター」の値として、「JCAPデータ自動車使用実態調査」をもとに求めた定義曲線を提示している。(定義曲線はアナログの図で示されている。右図はその要領に示されている近似式から筆者が作成したもの)
国土交通省が提示した日本の平均的ユーザーを想定した、外部充電電力による走行距離(プラグインレンジ)と電力走行距離割合(ユーティリティファクター)の関係については、後日掲載予定の「走行パターンとプラグインハイブリッド車の燃費特性・その2」以降で触れることにして、ここではユーティリティファクターを使用した「プラグインハイブリッド燃料消費率」の計算方法を示す。
一般に、プラグインハイブリッド車の(ガソリンなどの)燃料消費率「プラグインハイブリッド燃料消費率」は、測定した充電電力使用時燃料消費率およびハイブリッド燃料消費率とユーティリティファクターから、次式により計算できる。
FC(P) = 1 / { UF/ FC(E) + ( 1 - UF ) / FC(H) }
FC(P) : プラグインハイブリッド燃料消費率 [km/l]
FC(E) : 充電電力使用時燃料消費率 [km/l]
FC(H) : ハイブリッド燃料消費率 [km/l]
UF : ユーティリティファクター [-]
なお、パラレル型ハイブリッド車では、プラグインレンジにおいて負荷の大きさによってエンジンがキックインして外部充電電力とガソリンの両方によるブレンド走行になるので、分母の第1項はその燃料消費を計算したものである。シリーズ型ハイブリッド車では、プラグインレンジは全部電力走行になるので、分母の第1項はゼロとなる。パラレル型ハイブリッド車でも、後述するプリウスPHV(2009年型式指定)のJC08モードの試験では、プラグインレンジでエンジンのキックインがなかったために、シリーズ型ハイブリッド車と同様に分母の第1項はゼロとなる。
上記国土交通省の参考資料では、「カタログ等への燃費表示の例」として左表を掲載している。この例について、「プラグインハイブリッド燃料消費率」の値を各燃料消費率とユーティリティファクター(EV走行換算距離12.6kmではUF=約0.3)から上記の式で計算すると FC(P)=約32 km/lとなり、表に示されている「40.5 km/l」とは合わない。
この燃料表示の例に示されている「EV走行換算距離」は、国土交通省資料では「等価EVレンジ」とも表現されており、「プラグインレンジのうち、バッテリーに蓄電した外部電力により行った仕事量に相当する部分(仮に外部電力のみをエネルギー源とした場合にこれにより走行可能な距離)」のことである。表では、充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ)が13.0kmなのに対してEV走行換算距離が12.6kmとなっており、これから推算される充電電力使用時燃料消費率の値は表に示されている54.0kmより大きくなる。
「電力消費率」(プラグイン走行時の電力消費率)の定義は、「EV走行換算距離」を「一充電消費電力量」(一回の充電において消費する電力量、ただし電力量は外部から充電された電力量をコンセント側すなわち交流側で測った値)で除した値とする方が合理的と考えられる。上表「カタログ等への燃費表示の例」の「電力消費率」の数値は、「EV走行換算距離」ではなく「プラグインレンジ(充電電力使用時走行距離)」を「一充電消費電力量」で除した値になっている。この定義だと、プラグインレンジにおいてガソリンエンジン動力のブレンド割合が多いほどこの距離が長くなり電力消費率[km/kWh]の数値が大きくなり、エンジンブレンド割合の多いパラレルハイブリッド型がシリーズハイブリッド型より見掛け上良い電力消費率を示すことになる。
国土交通省の要領にあるユーティリティファクターの定義曲線図では、横軸は「プラグインレンジ/1日あたりの走行距離(km)」とあるが、これはユーティティファクターの意味から上の図のように横軸の外部充電電力による走行距離は「EV走行換算距離」(=「等価EVレンジ」)とする方が良いと思う。なお、下に示すように、これまでに型式指定をとったプラグインハイブリッド車2種では、プラグインレンジ(充電電力使用時走行距離)でエンジンのキックインがない性能/型式のものなので、充電電力使用時走行距離はEV走行換算距離と等しくなる。
これまでに、この燃費評価方法を使用して、「トヨタ・プリウスPHV」(2009年11月)と「スズキ・スイフト・プラグインハイブリッド」(2010年5月)が、JC08モードによる国土交通省の型式指定を取得している。両社のプレス発表資料から、PHEV燃費性能(国土交通省審査値)関係の値を抜粋して右表に示す。
この表でトップに示されている「プラグインハイブリッド燃料消費率」は、「57.0km/l」と「37.6km/l」とこれまでの自動車に比較して格段に良いガソリン消費率である。これは、日本の平均的走行パターンのユーザーがJC08モード相当の運転を行う場合に得られるべき値ということになる。このように優れた燃費によるガソリン費用と、ガソリンと比較した時に走行経費が格段に小さい電力費用による、経済的なエネルギー費用が、PHEVの特長となっている。
ただし、この「プラグインハイブリッド燃料消費率」の導出方法、とくにキーとなる「ユーティリティファクター」(電力走行距離割合)については注意が必要であり、後日掲載予定の「その2」以降で日本の平均的走行パターンとユーティリティファクターなどについて考察を行う。
注1: 「電力消費率」のパラグラフを修正しました。削除した旧パラグラフは下記。(2010年9月15日)
[ 「電力消費率」(プラグイン走行時の電力消費率)は、この「EV走行換算距離」を「一充電消費電力量」(一回の充電において消費する電力量)で除した値で、この電力量は外部から充電された電力量をコンセント(交流側)で測った値である。ただし、左表の「カタログ等への燃費表示の例」の電力消費率は、「プラグインレンジ(充電電力使用時走行距離)」を「一充電消費電力量」で除した値になっている。 ]
(つづく、「その2」以降は後日掲載予定)
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