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2009年12月

続・充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法

目的地への距離に基づいてプラグインハイブリッド車の電池充電率を計画制御する

プラグインハイブリッド車のユーザーがカーナビに指定した目的地が充電可能な場所である場合、車が目的地に到着した時に自動車駆動用電池の充電率(State of Charge, SOC)が許容最低の値になるように、電池充放電計画を計算してSOC制御を行えば、プラグインハイブリッド車のエンジンによる駆動距離を小さくすることが出来、系統充電による電力走行距離を大きくすることが出来る。

この方法により、ガソリン使用量の減少とそれに相当する電力使用量の増加、CO2排出量の削減、エネルギー費用の節減などの効果が、期待される

この設定目的地への距離によりSOC制御を行う方法は、別項「充電型電動自動車をよりエコロジカルに-- B.行程の標高情報に基づいて電動自動車の電池充電率を計画制御する」記載の方法と同様に、カーナビやプラグインハイブリッド車制御系のソフトウエアの設定変更のみで可能なので、あまり費用が掛からず、ハイブリッド走行(充電維持モード)をする距離のトリップの都度、一定の効果が期待できる。

以下、この方法の概要と典型的なケースにおける効果の試算結果をしめす。

プラグインハイブリッド車の走行モードと充電

Phev2_3プラグインハイブリッド車の典型的な走行モードは図のようになる。

プラグインハイブリッド車の電池走行モード(Charge Depleting Mode)では、基本的に系統から電池に充電した電力エネルギーを消費しながらの電力走行になる。シリーズ型ハイブリッドではオール電力走行、パラレル型ハイブリッドでは電力+エンジンによるブレンド走行になる。

プラグインハイブリッド車の場合、電池走行モードの航続距離を超える距離の走行は、ガソリンエンジンによるハイブリッド走行になる。ハイブリッド走行では、通常、電池は充放電を繰り返し、電池のSOCは図に示すように低SOCのある幅の中に維持される充電維持モード(Charge Sustaining Mode)になる。このモードでは、走行のエネルギーは全てエンジン駆動の燃料(この場合はガソリン)によって賄われる。

充電維持モードで車が目的地に到着した後は、その目的地が自宅などの車の定置場所、あるいは充電可能な駐車場などならば、そこでプラグインして、充電を行うことになる。

目的地到着時の充電状態に着目

プラグインハイブリッド車を電池走行モードを終えて充電維持モードで使用している場合、充電可能な目的地に到着時の電池のSOCがその変動幅のどの位置かによって、そのトリップ(一連の走行)におけるガソリン消費量と電力消費量が変わる。

それ故、カーナビに充電可能目的地を設定し、この目的地に到着した時に電池SOCが許容最低の値になるように、電池充放電計画を計算してSOC制御を行えば、プラグインハイブリッド車のエンジンによる駆動距離を小さくすることが出来、系統充電による電力走行距離を大きくすることが出来る。すなわち、電力走行割合(全走行距離に対する系統充電の電池電力で走行する距離の割合)を大きくすることが出来る。

どの程度の燃料・費用の節減になるか?

この方法によって、どの程度の電力走行割合の改善、ガソリン使用量減少、電力使用量増加、CO2排出削減、エネルギー費用節減になるか、典型的なケースを想定して試算する。

使用プラグインハイブリッド車は、登録車(小型)クラスの次の設計・性能・条件のものを想定する。

• 電力走行電費:6km/kWh、ハイブリッド走行燃費:24km/L、電池走行モードSOC範囲:100%~25%、充電維持モード(ハイブリッド走行)SOC範囲:15%~35%。
• 電池容量:5kWh~10kWh、電池モード走行距離:5kWh~10kWh x 0.75 x 6km/kWh = 22.5km~45.0km
• 試算では、電池走行モードがシリーズハイブリッド型のオール電力走行+ハイブリッド走行の場合として評価したが、パラレルハイブリッド型のブレンド走行+ハイブリッド走行の場合でも同様の傾向になると考える。
• SOC制御を行わない場合の目的地到着時点のSOCは15%~35%の平均の25%とし、SOC制御を行った場合の目的地到着時点のSOCは許容最低(ここでは15%)とする。すなわち、電池容量の10%(5kWh電池では0.5kWh、10kWh電池では1.0kWh)の電力走行距離分のガソリン消費を減らし、この分を駐車中に系統から充電する。

試算条件:

CO2排出原単位(ガソリン 2.32kg-CO2/L・環境省ガイドライン,電気 0.36kg-CO2/kWh・電気事業連合会・2006年)、ガソリン価格(125円/L)、電気料金(自宅充電は深夜料金の10円/kWh、勤務先充電は昼間料金の25円/kWh)、

試算結果:

(1) ユーザーは、電池容量5kWh(電力走行距離22.5km)のプラグインハイブリッド車を使用して、片道30km・往復60kmの距離を通勤する人、月20日出勤/1200km走行、勤務地にも充電設備がありそこで満充電にし、帰宅後は深夜電力により満充電にする場合

設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、SOC制御を行わない場合と比較して、

電力走行割合は、75%から85%に10ポイント増加
ガソリン使用量は、12.5Lから7.5Lに5L、40%減少
電力使用量は、150kWhから170kWhに20kW、13%増加
CO2排出量は、83.0kgから78.6kgに4.4kg、5.3%削減
エネルギー費用は、4187円から3912円に275円、6.6%節減

(2)  ユーザーは、電池容量10kWh(電力走行距離45.0km)のプラグインハイブリッド車を使用して、片道30km・往復60kmの距離を通勤する人、月20日出勤/1200km走行、勤務地には充電設備はなく、1日1回帰宅後に深夜電力により満充電にする場合

設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、SOC制御を行わない場合と比較して、

電力走行割合は、75%から85%に10ポイント増加
ガソリン使用量は、12.5Lから7.5Lに5L、40%減少
電力使用量は、150kWhから170kWhに20kW、13%増加
CO2排出量は、83.0kgから78.6kgに4.4kg、5.3%削減( ここまでは(1)の場合と同じ値)
エネルギー費用は、3062円から2637円に450円、14.7%節減

費用が掛からず、一定の効果あり

以上のように、設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、ガソリン使用量の減少とそれに相当する電力使用量の増加、CO2排出量の削減、エネルギー費用の節減などの効果がある。

この方法は、本ブログ別項「充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法 -- B.行程の標高情報に基づいて電動自動車の電池充電率を計画制御する」記載の方法と同様に、カーナビやプラグインハイブリッド車制御系のソフトウエアの設定変更のみで可能となる。

すなわち、設定目的地への距離によりSOC制御を行う方法はあまり費用が掛からず、ハイブリッド走行(充電維持モード)をする距離のトリップの都度、一定の効果が期待できるので、この方法をメーカーが提供しユーザー設定で使用可能にすることにより、ガソリン使用量減少・CO2排出削減・ユーザー費用節減などの効果が期待できる。

追記1: Ford社が同様のアイディアの特許を申請、C-Max、Fusionなどに標準装備

米国のFord自動車がこのアイディアと同様の機能の特許を申請し、PHEVのFord C-Max EnergiとFusion EnergiおよびHEVのFord C-MaxとFusionに「EV+」と名付けて標準装備しました。

「EV+」はHEV・PHEV でGPS により家近辺などで自動でEV モードになり、HEV では排ガスや音なしで走行でき、PHEV では筆者の上記アイディアにあるように充電場所にSOC 最低で到着できるので、環境やエネルギーに優しいのが売り。

Ford社のプレス発表"Ford Hybrid's EV+ Feature Learns and Automatically Adjusts Powertrain to Deliver More Electric-Only Driving"はここ

この追記は「プラグインハイブリッド車:目的地への距離による電池SOCの計画制御(追記1)」の題で別項に再録して解説をしています。
(2013.01.06)

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プリウス・プラグインハイブリッド車の市場導入始まる、今後の展開を期待

Priusphvnt09_087現行の第3代プリウスをベースにしたプラグインハイブリッド車(PHEV、トヨタではPHVと称している)は、09年11月に国土交通省の型式認定をとり、いよいよ市場導入が始まりました。

プリウスPHVは、5.2kWhのリチウムイオン電池を搭載して、JC08モードで23.4kmの電力走行、EV走行最高速度は約100km/hとなっています。トヨタ自動車は、この車を経済産業省モデル事業の「EV・PHVタウン」に選定された自治体などの特定利用者にリースする予定で、09年11月から商談を開始し12月中旬から納車する予定にしています。

注目の価格も報道されています。MSNニュースは「プリウスPHV 価格は525万円、高価すぎてショック」の見出しで報道し、この内容が自動車関係のサイトやブログに引用されて、その高値が話題になっています。

このMSNニュースによると、「クリーンエネルギー自動車導入補助金」は「ベース車両との差額として算出された基準額の半額が交付される」とのこと。ベース車両のプリウスの本体価格が236万円、プラグイン化費用が264万円で、プリウスPHVの車両価格は500万円になるとしています。クリーンエネルギー自動車導入補助金として、プラグイン化費用264万円の半額の132万円を貰えることになります。それ故、消費税込みの車両価格は525万円、これから補助金分を差し引いた額が購入費用になります。

「クリーンエネルギー自動車導入補助金」制度があって、「クリーンエネルギー自動車」を欲しがる自治体などがいる限り、トヨタ関係者が「リース販売の価格なので気にしない」と言っている「高値すぎてショック」な「プリウスPHV525万円」のような価格が付くことになります。

この価格は上のような事情のもとで決まったのであって、電気自動車の何分の一の容量の5kWhほどの小さな電池を搭載するPHVに、一般販売ではこのような価格が付けられるとは思えません。

読売新聞の報道によると、トヨタはこの第3代プリウスベースのPHVを2011年末から一般発売するようです。米国で年15,000台の先行販売をし、同時期に日本でも販売し価格は300万円台としています。

朝日新聞の報道によると、第3代プリウスベースのPHVは2011年末から一般向けに月1,000台程度の限定販売をし、2014年ころに次の第4世代プリウスのハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車を同時に発売し、HEVの価格は第3世代プリウスHEVとほぼ同じ200万円台前半としています。これから推定すると、10kWh程度の電池を積んだ本格PHVは300万円以下の価格になると考えられます。

トヨタのプリウス・プラグインハイブリッド市場導入の取材会では、「2年後に市販を目指す」、「数万台規模」、「お客様の手の届く価格」と説明しています。

これらのニュースを総合してプリウスのPHV化ロードマップを推定すると;

2007年7月 第2世代プリウスペースのPHVの公道試験を開始
 日本8台のほか、米、欧でも試験

2009年末 第3世代プリウスベースのPHVをフリートユーザーにリース販売開始
 日本230台、米150台、欧200台、合計約600台
 価格は、500万円(日本では補助金を差し引くと368万円)

2011年末 第3世代プリウスベースのPHVを一般ユーザーに販売開始
 年数万台規模の生産、米国で年15,000台程度、日本で月1,000台程度を販売
 価格は、5kWh~電池搭載で200万円台後半

2014年ころ 第4世代プリウスベースのPHVを販売開始、PHV、HEV選択可能に。
 価格は、HEVが200万円台前半、PHVが~10kWh電池搭載で200万円台後半

私はこれからの自動車電動化の本命機種はPHEVと考えているので、PHEVを推進する自動車メーカーは次の方向で開発導入をしていくべきと考えています。

1、本格的なPHEVは、現在プリウスPHVが搭載している5.2kWhからその2倍の10kWhくらいの電池を搭載すべきで、これによりEV走行距離は50km以上、登録車平均のEV走行距離割合は65%以上になり、ガソリン節減による環境・経済効果をはっきりと出すことが出来ます。現行の5.2kWh・23.4kmEV走行のPHEVでは、登録車平均のEV走行距離割合45%程度で未だガソリンによるHEV走行距離が50%以上を占めています。そして、搭載電池の容量はユーザーの走行パターンに合わせてオプションで変更できるようにしたら、エネルギー・資源の節減、CO2排出量の削減、ユーザー費用の低減に大きな効果が出てきます。(下記の追記1を参照)

2、PHEVは搭載する電池容量が電気自動車(BEV)に比べて小さく経済的である特長を有するので、それを印象付けるような戦略的な価格設定をするべきと考えています。すなわち、早い時期から、BEVより格段に安い価格を提示していく。今回の500万円という価格は、上のような事情の中で決まったとしても、2011年末の一般販売の5kWh~電池搭載PHV、さらに2014年ころの第4世代プリウスベースの~10kWh電池搭載PHVを200万円台後半の価格で提供すれば、ハイブリッド車に匹敵する大量需要が出てくると考えます。

3、将来のPHEVは電力系統構成機器の一つとして搭載する電池の活用が考えられており、PHEVと小規模エネルギーマネージメントシステム(HEMS、BEMSなど)、ローカルグリッド、さらに大規模電力系統との統合利用(V2G, Vehicle-to-Grid)を見据えて、それらへの展開を考慮したパワーエレクトロニクス、通信設備、ソフトウエアなどの開発・設計をしておくことが重要と考えています。

追記1:

上に「搭載電池の容量はユーザーの走行パターンに合わせてオプションで変更できるようにしたら、エネルギー・資源の節減、CO2排出量の削減、ユーザー費用の低減に大きな効果が出てきます」と書きましたが、10年2月、トヨタ自動車が電気自動車やプラグインハイブリッド車のバッテリー容量に選択制の導入を検討しているというニュースが出ています。この電池容量の選択制の検討は、大変良い動きだと思っています。

さらに、もう一段、現在ユーザーが乗っている自動車に走行記録(毎日の走行距離)を自動記録する装置を付ければ、将来プラグインハイブリッド車を購入する時に、自分のドライブパターンに合った最適電池容量を定量的に推定できるようになります。自動車メーカーが、既存の車やこれから売り出す車に、この「日毎走行距離自動記録」ができる装置あるいは設定をすれば、これはユーザーにとって有難いサービスであるとともに、メーカーにとっても顧客の囲い込みに有利になると考えられます。

最適電池容量の推定方法などの詳細は別項「充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法」と、その末尾の追記2をご覧ください。(10年2月9日、2月12日)

追記2:

産経ニュース(2010.7.19)は、「エコカー戦線激化 トヨタのPHV、300万円以下で発売へ 安価設定で他社EVに対抗」の見出しで、次のように報じている。

「トヨタ自動車が、平成23年末に発売予定の家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)の価格を、300万円以下とする方向で検討していることが18日、分かった。ハイブリッド車(HV)で得た原価低減などのノウハウを生かすとともに、車載用リチウムイオン電池の量産化で製造コストを下げられると判断した。ライバルメーカーの電気自動車(EV)よりも価格を70万~100万円安く設定することにより、PHVでエコカー分野のデファクトスタンダード(業界標準)を狙う。(以下略)」

上記の「プリウスのPHV化ロードマップ」の私の推定と一致しましたね。
(2010.8.13)

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