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続・充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法

目的地への距離に基づいてプラグインハイブリッド車の電池充電率を計画制御する

プラグインハイブリッド車のユーザーがカーナビに指定した目的地が充電可能な場所である場合、車が目的地に到着した時に自動車駆動用電池の充電率(State of Charge, SOC)が許容最低の値になるように、電池充放電計画を計算してSOC制御を行えば、プラグインハイブリッド車のエンジンによる駆動距離を小さくすることが出来、系統充電による電力走行距離を大きくすることが出来る。

この方法により、ガソリン使用量の減少とそれに相当する電力使用量の増加、CO2排出量の削減、エネルギー費用の節減などの効果が、期待される

この設定目的地への距離によりSOC制御を行う方法は、別項「充電型電動自動車をよりエコロジカルに-- B.行程の標高情報に基づいて電動自動車の電池充電率を計画制御する」記載の方法と同様に、カーナビやプラグインハイブリッド車制御系のソフトウエアの設定変更のみで可能なので、あまり費用が掛からず、ハイブリッド走行(充電維持モード)をする距離のトリップの都度、一定の効果が期待できる。

以下、この方法の概要と典型的なケースにおける効果の試算結果をしめす。

プラグインハイブリッド車の走行モードと充電

Phev2_3プラグインハイブリッド車の典型的な走行モードは図のようになる。

プラグインハイブリッド車の電池走行モード(Charge Depleting Mode)では、基本的に系統から電池に充電した電力エネルギーを消費しながらの電力走行になる。シリーズ型ハイブリッドではオール電力走行、パラレル型ハイブリッドでは電力+エンジンによるブレンド走行になる。

プラグインハイブリッド車の場合、電池走行モードの航続距離を超える距離の走行は、ガソリンエンジンによるハイブリッド走行になる。ハイブリッド走行では、通常、電池は充放電を繰り返し、電池のSOCは図に示すように低SOCのある幅の中に維持される充電維持モード(Charge Sustaining Mode)になる。このモードでは、走行のエネルギーは全てエンジン駆動の燃料(この場合はガソリン)によって賄われる。

充電維持モードで車が目的地に到着した後は、その目的地が自宅などの車の定置場所、あるいは充電可能な駐車場などならば、そこでプラグインして、充電を行うことになる。

目的地到着時の充電状態に着目

プラグインハイブリッド車を電池走行モードを終えて充電維持モードで使用している場合、充電可能な目的地に到着時の電池のSOCがその変動幅のどの位置かによって、そのトリップ(一連の走行)におけるガソリン消費量と電力消費量が変わる。

それ故、カーナビに充電可能目的地を設定し、この目的地に到着した時に電池SOCが許容最低の値になるように、電池充放電計画を計算してSOC制御を行えば、プラグインハイブリッド車のエンジンによる駆動距離を小さくすることが出来、系統充電による電力走行距離を大きくすることが出来る。すなわち、電力走行割合(全走行距離に対する系統充電の電池電力で走行する距離の割合)を大きくすることが出来る。

どの程度の燃料・費用の節減になるか?

この方法によって、どの程度の電力走行割合の改善、ガソリン使用量減少、電力使用量増加、CO2排出削減、エネルギー費用節減になるか、典型的なケースを想定して試算する。

使用プラグインハイブリッド車は、登録車(小型)クラスの次の設計・性能・条件のものを想定する。

• 電力走行電費:6km/kWh、ハイブリッド走行燃費:24km/L、電池走行モードSOC範囲:100%~25%、充電維持モード(ハイブリッド走行)SOC範囲:15%~35%。
• 電池容量:5kWh~10kWh、電池モード走行距離:5kWh~10kWh x 0.75 x 6km/kWh = 22.5km~45.0km
• 試算では、電池走行モードがシリーズハイブリッド型のオール電力走行+ハイブリッド走行の場合として評価したが、パラレルハイブリッド型のブレンド走行+ハイブリッド走行の場合でも同様の傾向になると考える。
• SOC制御を行わない場合の目的地到着時点のSOCは15%~35%の平均の25%とし、SOC制御を行った場合の目的地到着時点のSOCは許容最低(ここでは15%)とする。すなわち、電池容量の10%(5kWh電池では0.5kWh、10kWh電池では1.0kWh)の電力走行距離分のガソリン消費を減らし、この分を駐車中に系統から充電する。

試算条件:

CO2排出原単位(ガソリン 2.32kg-CO2/L・環境省ガイドライン,電気 0.36kg-CO2/kWh・電気事業連合会・2006年)、ガソリン価格(125円/L)、電気料金(自宅充電は深夜料金の10円/kWh、勤務先充電は昼間料金の25円/kWh)、

試算結果:

(1) ユーザーは、電池容量5kWh(電力走行距離22.5km)のプラグインハイブリッド車を使用して、片道30km・往復60kmの距離を通勤する人、月20日出勤/1200km走行、勤務地にも充電設備がありそこで満充電にし、帰宅後は深夜電力により満充電にする場合

設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、SOC制御を行わない場合と比較して、

電力走行割合は、75%から85%に10ポイント増加
ガソリン使用量は、12.5Lから7.5Lに5L、40%減少
電力使用量は、150kWhから170kWhに20kW、13%増加
CO2排出量は、83.0kgから78.6kgに4.4kg、5.3%削減
エネルギー費用は、4187円から3912円に275円、6.6%節減

(2)  ユーザーは、電池容量10kWh(電力走行距離45.0km)のプラグインハイブリッド車を使用して、片道30km・往復60kmの距離を通勤する人、月20日出勤/1200km走行、勤務地には充電設備はなく、1日1回帰宅後に深夜電力により満充電にする場合

設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、SOC制御を行わない場合と比較して、

電力走行割合は、75%から85%に10ポイント増加
ガソリン使用量は、12.5Lから7.5Lに5L、40%減少
電力使用量は、150kWhから170kWhに20kW、13%増加
CO2排出量は、83.0kgから78.6kgに4.4kg、5.3%削減( ここまでは(1)の場合と同じ値)
エネルギー費用は、3062円から2637円に450円、14.7%節減

費用が掛からず、一定の効果あり

以上のように、設定目的地への距離によりSOC制御を行うと、ガソリン使用量の減少とそれに相当する電力使用量の増加、CO2排出量の削減、エネルギー費用の節減などの効果がある。

この方法は、本ブログ別項「充電型電動自動車をよりエコロジカルに -- ユーザーの利用方法・メーカーの提供方法 -- B.行程の標高情報に基づいて電動自動車の電池充電率を計画制御する」記載の方法と同様に、カーナビやプラグインハイブリッド車制御系のソフトウエアの設定変更のみで可能となる。

すなわち、設定目的地への距離によりSOC制御を行う方法はあまり費用が掛からず、ハイブリッド走行(充電維持モード)をする距離のトリップの都度、一定の効果が期待できるので、この方法をメーカーが提供しユーザー設定で使用可能にすることにより、ガソリン使用量減少・CO2排出削減・ユーザー費用節減などの効果が期待できる。

追記1: Ford社が同様のアイディアの特許を申請、C-Max、Fusionなどに標準装備

米国のFord自動車がこのアイディアと同様の機能の特許を申請し、PHEVのFord C-Max EnergiとFusion EnergiおよびHEVのFord C-MaxとFusionに「EV+」と名付けて標準装備しました。

「EV+」はHEV・PHEV でGPS により家近辺などで自動でEV モードになり、HEV では排ガスや音なしで走行でき、PHEV では筆者の上記アイディアにあるように充電場所にSOC 最低で到着できるので、環境やエネルギーに優しいのが売り。

Ford社のプレス発表"Ford Hybrid's EV+ Feature Learns and Automatically Adjusts Powertrain to Deliver More Electric-Only Driving"はここ

この追記は「プラグインハイブリッド車:目的地への距離による電池SOCの計画制御(追記1)」の題で別項に再録して解説をしています。
(2013.01.06)

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