« 米、プラグインハイブリッド車・電気自動車の税額減免決まる | トップページ | 協働的エネルギー転換プロセス = 原子力は化石燃料・バイオマスに熱を供給、高効率エネルギー転換、炭素資源ノーブルユース »

中東・湾岸協力会議加盟国の原子力国際シンポジウムに参加して

Programcover2008年11月3日~4日、中東の湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council、略してGCC)加盟の6ヶ国による初の原子力国際シンポジウムがサウジアラビアのジェッダで開催されました。豊富な石油資源を持っているGCC加盟国がエネルギー源として原子力利用の検討を始めたのです。私は、このシンポジウムに招待され、講演を行いました。以下は、シンポジウムの概要とGCCの原子力利用への動きです。

 <-- プログラムの表紙

シンポジウム開催までの経緯 -- GCCサミットによる原子力平和利用の決定 --

 (1) 2006年12月、リヤドで開催された湾岸協力会議に加盟しているアラブ首長国連邦・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビアの6カ国の代表による第27回最高評議会(サミット)において、「国際基準・システムに調和した平和目的の原子力技術利用とそのための共同計画」が決定された。
 
 (2) 同月開催されたGCC加盟国の大学・高等教育機関学長委員会の会合において、上記決定に基づいて「原子力平和利用国際シンポジウム」を開催することが決議された。
 
 (3) このシンポジウムのオーガナイザーとして、GCCにおいて唯一原子力工学科を有するサウジアラビアのキングアブドルアジズ大学(KAU)が選ばれ、同国のアブドラ国王の支援で開催されるることになった。

ジェッダの大学で開催 -- 学生数8万人、原子力工学科設置 --
Confhall_2
シンポジウムの会場は、ジェッダ市の大学(KAU)のホール。ジェッダは首都リヤドに次ぐサウジアラビア第2の大都市で、イスラム教の2大聖地であるメッカやメディナへの出入口の古都で商業の中心地である。

KAUは、学生数8万人以上の大きな大学で、1976年から原子力工学科を設置しており、放射性同位元素の石油工業への利用や医学利用などで進んだ技術を持っている。今回の会議に出て知ったが、原子力工学科の教授などのスタッフは、欧米の大学のPh.Dを持っている人が多いようで、英語が流暢でRI利用のみならず原子炉などについてもかなり突っ込んだ質問が出ていて、レベルの高さが伺われた。

開会セッションと特別セッション --IAEAやサウジKACSTから講演 --

Engnews_4初日午前の開会式は、会議関係者、大学関係者など1500名ほどが参加して大きなホールで開かれ、最初に組織委員長のアルジョハニ教授の歓迎の挨拶の後、KAU学長、サウジアラビア高等教育大臣、ヨーロッパ議会代表、IAEA代表などが講演をした。

その後の特別セッションでは、サウジアラビアの科学技術政策立案・実施機関であるリヤドの科学技術機構(KACST)の副理事長のターキ・アル・サウド 博士(同国の王子でスタンフォード大学Ph.D)が、サウジアラビアの科学技術・エネルギー・原子力の研究開発の現状・政策などについて講演した。このセッション以降は、200名程度収容の会議場を使用した。

技術セッション –- GCC国以外から50名参加 --

初日の午後から第3日の午後まで、二日半に亘って技術セッションが開催された。参加者は、GCC国以外から約50名、サウジアラビアおよび他のGCC国から約30~60名が参加していた。日本からの参加は、筆者と柳澤和章氏(日本原子力研究開発機構)の2名。

講演は全部で50件で、サウジアラビアから8件、GCC国以外は全て招待講演で42件。この国別の内訳は、米国:18件、ロシア:3件、日本・エジプト・トルコ・バングラデッシュ:各2件、フランス・カナダ・オーストリー・スイス・スウェーデン・ブラジル・中国・ドイツ・ニュージーランド・パキスタン:各1件。

今回のシンポジウムの企画に当たっては、KAUのスタッフのネットワークを利用して、原子力導入に関わる各分野の人を各国から選考・招待したとのこと。原子力プラントメーカーや電力会社からの参加はなく、大学・コンサルタント(会社)・研究機関などの専門家が殆どであった。

講演の内容は多岐 -- 原子力導入計画に関わる多くの分野を網羅 --

講演内容は多岐に亘り、原子力導入計画に関わる多くの分野を網羅していた。すなわち、原子力導入の基本戦略、GCCにおける原子力導入のステップ、規制・知的所有権などの法整備、原子力計画先行国の経験、教育・研修・人材開発の方策、安全・核拡散防止・施設防護、世界の軽水炉技術の展望、高温ガス炉やその他の革新的原子炉の提案、世界のエネルギーと原子力、原子力の将来技術、原子炉運転訓練シミュレーター、原子炉解析計算手法、原子力海水脱塩、研究炉の経験・燃料、核科学研究手段としての加速器、石油工業などでのRI利用、RIの医学利用、放射線測定、非破壊検査、など。これらの講演の予稿は、CD-ROMに収録されて配布された。

Horipresent_2筆者の講演は、ここ数年研究・調査を行っている「原子力と化石燃料を使用する協働的エネルギー転換プロセス」と題するもの。化石燃料を発電・水素製造・液体燃料製造などに使用する際に、原子力熱を供給することによって加熱のための化石燃料の燃焼を避け、エネルギー転換効率向上・化石燃料節減・二酸化炭素排出削減を可能にする将来技術の展望を行った。このような方法で石油など化石燃料の「ノーブル・ユース」(化学エネルギーの特長をフルに発揮する付加価値の高い利用)を図るべきと結んだが、後でKAUの教授から賛同のコメントがあった。

GCC国の原子力計画の今後の進め方 -- KACST原子力研究所の講演から --

サウジアラビアの科学技術機構(KACST)の原子力研究所から「GCC国原子力計画の今後のステップ」と題する講演があった。これは、GCC国が原子力導入計画を決定した後IAEAと共同で行った予備調査をもとに纏めたレポートで、GCCの今後の原子力導入方針を知る上で参考になるものである。以下、その概要を記す。

GCCサミットの決定を実行に移すために、GCC国は発電・海水脱塩などのために原子力を導入する可能性について、IAEAと共同で「GCC地域における原子力発電・海水脱塩の予備的可能性調査」を実施した。この調査で、原子力導入に必要なインフラが整備された場合、想定した経済性評価条件下では、原子力はGCC地域の将来の発電・海水脱塩のコスト低減のために不可欠であることが示された。ここでは、原子力はGCC市場に2018年頃乃至2025年頃に導入されるとしている。

原子力インフラの整備に関しては、タイムスケール、人的資源・研修、規制体制、利用可能な発電プラント技術、コスト、資金確保・経済性、燃料供給確保、技術支援・機関、法整備、廃炉、使用済み燃料・廃棄物処理、情報公開などについて、必要なステップ、主な課題などを検討している。

Arbnews_2さらに、参画する必要がある国際条約・協定やIAEA規則文書の調査、GCC各国ごとに必要な法律やインフラの整備の現状の調査を行い、GCC各国ごとに今後取るべき方策をまとめている。そのほか、人材開発、原子力安全、放射線安全に関わる立法規則・ガイドライン・規制体制・スタッフ育成、GCC内の調整協力・国際協力・活動などについて、検討結果を示している。

最後に、原子力がGCC加盟各国のエネルギーミックスに組み込まれることが決定されたからには、原子力に関する戦略的計画、サイトの検討、廃棄物処理のコンセプト検討、インフラ整備実行計画、重要な多国間協定整備などを検討するGCC各国の多分野の専門家から成る永続的な「技術ワーキンググループ」の速やかな結成が必要と述べている。また、GCC各国におけるインフラ整備の各フェーズとそのマイルストーンの設定、エネルギー供給計画の中での原子力の位置づけ明確化の必要性、などにも言及している。

GCC各国で進められる原子力導入 -– バレル47ドル以上で原子力が有利 --

このような「技術ワーキンググループ」などによるGCC全体の原子力導入に向かっての共同的取り組みとともに、GCC各国では安全・許認可などの法・体制の整備、人材育成、「原子力計画実施機構」(NEPIO)の設立など、原子力導入に向かっての準備が進められる。

中東の経済は年率5%以上で拡大し、電力需要は次の10年間に世界平均の約3倍の年率7~10%で増加すると見込まれている。現在、GCC6カ国の電力設備容量は約100GWeでそのほかに海水脱塩の需要も大きい。世界エネルギー協議会の予測によると、GCC6カ国は次の10年に100GWe、2030年までにはさらに200GWeの設備容量を必要とし、その内90GWeは二酸化炭素排出削減のために原子力によるとしている。

このように原子力導入の必要性が差し迫ってきたことから、最近のニュースにあるように、アラブ首長国連邦がフランスのArevaなど3社とEPRの建設について協力協定を締結するなど、各国の原子力発電建設に向かっての具体的動きが急になってきている。また、米国、英国、フランスなどは、GCC国と個別に原子力協力の二国間協定を結ぶなど、政府間の協力も進んでいる。

サウジアラビアからの発表の中で「バレル47ドル以上ならば原子力がコスト的に有利」と述べていたが、発電・海水脱塩のための原子力の導入が、地球の環境保全と化石燃料資源節減に加えて、長期経済的にも有利な見通しとなると、中東の原子力シフトは一層加速されることになろう。

(本稿は編集して原子力産業新聞2008年11月27日号に掲載された)

付記:

JeddapartysjpgNachikoroof_2サウジアラビアでは、女性はアバヤを着る、一人で外出しないなどの戒律があり、同行した家内も同様でした。

<-- シンポジウムのレセプションで(ジェッダ・ウェティンホテルの宴会場入口)

--> 案内の大学関係者と(オールドタウンの由緒ある「ナシーフフハウス」の屋上)


HighwayTunneltoatlantis帰りに寄ったドバイは、空港、道路、ホテル、モール、ビルなど、すべて超豪華で、バブルのピークでした。

<-- 片側5~6車線の高速道路

--> 海上都市アトランティスへ、モノレールとトンネル

追記1: 「サウジアラビアの女性は今」

朝日新聞2012年3月2日のコラム「素顔に迫る―サウジアラビアの女性は今 4」に下のような記事が出ていました。少しづつ変わってきたようです。(2012.03.04)
Saudiarabiawomenasahi120302

|

« 米、プラグインハイブリッド車・電気自動車の税額減免決まる | トップページ | 協働的エネルギー転換プロセス = 原子力は化石燃料・バイオマスに熱を供給、高効率エネルギー転換、炭素資源ノーブルユース »

研究開発」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中東・湾岸協力会議加盟国の原子力国際シンポジウムに参加して:

« 米、プラグインハイブリッド車・電気自動車の税額減免決まる | トップページ | 協働的エネルギー転換プロセス = 原子力は化石燃料・バイオマスに熱を供給、高効率エネルギー転換、炭素資源ノーブルユース »