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2007年1月

電池のブレイクスルー!? "EESU"

もし、これが本当ならば、2007年1月22日のMITテクノロジーレビューが書いているように「Game changing」、「This could change everything」なエネルギー技術かも知れない。

Eestor2それは、「EESU」(Electrical Energy Storage Unit、電気エネルギー貯蔵ユニット)と名付けられたセラミックを使用したウルトラ・キャパシターです。[U.S.Patent, Assignee: Eestor, Inc., Cedar Park, TX, Appl. No.: 09/833,609, Filed: April 12, 2001. "Electrical-energy-storage unit (EESU) utilizing ceramic and integrated-circuit technologies for replacement of electrochemical batteries"]

電極の板の間にチタン酸バリウムの誘電体を挟んだ構造だが、この純度を高めて20~30の誘電率を実に18500以上に上げることによって、リチウムイオン電池をエネルギー密度・価格・充電時間・安全性で圧倒する性能を得たとのこと。

以前から、これに関するニュースが流れていましたが、開発をしている当の会社--テキサス州オースチンのEEStor社--の姿が見えないために、関心のある人も半信半疑でした。日本でも、北大の山本教授が2006年12月、このことを「蓄電技術のイノベーション」としてブログに書いています。

EESUは、エネルギー密度が鉛酸電池の32Wh/Kg、リチウムイオン電池の120Wh/Kgに対して280Wh/Kgと大きく、繰り返し充電回数即ち耐久性も、リチウムイオン電池の携帯電話用などが500~1000回程度、自動車用は現在4000回(15年)を目標にしているのに対して、EESUは化学反応に拠らないキャパシターなので百万回以上が可能とのこと。なお、価格はKWh当たりで鉛酸電池の半分位と安い。

Factory_005_259px_1EESUを自動車に使用する場合は、小型電気自動車用の15KWhの電池は重さが100ポンド(45Kg)になり、これで200マイル(320Km)の航続距離が得られ、充電時間は10分以内と短い。

EEStor社は、カナダのZENNという電気自動車製造会社(写真)と中小型電気自動車用のEESUの独占供給契約を結んでおり、2007年にZENN社に製品の出荷を始めるようです。長いこと沈黙を守っていたEEStor社が、EESUの自動製造ラインが必要な品質要求を満たせるようになったことと製品出荷について2007年1月中旬に発表をしました。

MITテクノロジーレビューの記事では、「(この技術の)影響は途方もなく、多くの人には、信じられない」と言っており、このようなブレイクスルーは、既に「電気ルネッサンス」で揺れている運輸セクターを根本的に変革し、変動電源の風力発電や太陽電池のパーフォーマンスの改善、電力グリッドの効率と安定性向上などにより、米国のエネルギーセキュリティ追求を叶える可能性がある、としています。

もし、この電力貯蔵技術が本物ならば、エネルギー分野に大きな影響があるのは確かです。また、先にFirefly社による鉛酸電池の革新があり、またこのEEStor社によるキャパシターのブレイクスルーが明らかになり、本命のリチウムイオン電池は相当な革新・コストダウンを迫られることになります。

EEStor社は今回製造開始について発表をしましたが、「技術革新の結果に語らせたい」とあくまでも控えめの姿勢。キャパシターの専門家の中には、EESUの性能に疑問を呈する人もいる。先ず、自己放電、次にセラミックの強度の問題、耐低温性、高電圧クラッシュなど。

さらに詳しい情報は、"EEStor"などでGoogleすれば沢山出てきますが、山本教授が書いているように当のEEStor社のホームページらしい ところは依然として「構築中」のまま。

注記:

MIT Technology Reviewのサイトには、ページの下のコメント欄に多くの意見が寄せられており、この技術は本物か、本当に成功するかなど、延々と議論が行われています。また、この技術を紹介している他のサイトでもいろいろな意見が出ています。

公表されている性能は理論的に難しいことを説明しているものでは、電気自動車Teslaのサイトに出ているAnatoly Moskalevのコメントその1その2などがあります。彼は、現在のウルトラキャパシターと比較して、EEStor社のものは質量当りのエネルギー密度で同程度、体積当りのエネルギー密度で5倍程度が精々で、大きな改良ではないと言ってます。

追記:
Eestor_cell_2WikipediaでもEEstorを取り上げています。Wikipediaは普通はhypeな情報は載せませんが、誰かこれに関心がある人が書いたのでしょう。(2007.11.28)

追記2:
米国Lockheed Martin社が、EEStor社と電力貯蔵装置「EESU」の軍事・本土防衛目的利用で国際権利の協定を締結したと発表しました。鉛蓄電池の10分の1の重量・容積、10倍のエネルギー密度という触れ込みのウルトラキャパシターは、いよいよ本物になるのでしょうか?(2008.1.9)

追記3:
ZENN自動車のCEOのIan CliffordがGM-Volt.comのインタビューで、EESUの完成品を08年末に受け取り、09年末までにそれを搭載した「cityZENN」という電気自動車を発売すると語っています。ただ、ZENN自動車もEESUの実物は見ておらず、第3者のデータを見ただけのようです。EEStor社に投資している有名ベンチャーキャピタルのKleiner Perkins社、EEStor社とライセンス契約を結んだLockheed Martin社などの名前を挙げ、EESUに自信ありと述べています。(2008.6.8)

追記4:
EESUへの期待でZENN自動車の株はこの3ヶ月で81%上がっており、投機の対象になっているようです。Financial Postによると、EEStor社は数週間以内にEESUの第三者機関によるテスト結果を発表する模様。ZENN自動車は車重1400Kg以下の車へのEESU搭載の独占権を持っています。(2008.6.28)

追記5:
Texas Research International(独立機関)が、EESUに使用する誘電粉体CMBTを試験する機器・方法・結果は、必要な精度を持っていると認証しました。この発表を受けてEESUの自動車への独占使用権を持つZENN自動車は、進展を確認する声明を発表しました。(2008.7.29)

追記6:
Light Electric Vehicles Company(略称LEVCO)という会社が、EEStor社のEESUの2輪自動車と3輪自動車の電力推進への適用に関する全世界独占的協定を締結したと発表しました。なお、4輪自動車への適用については、上記のようにZENN自動車が独占権を持っています。(2008.9.24)

追記7:
08年10月27日のGM-Volt.comは、次のようにEEStor社の創立者でEESUの特許を持っているDr.Richard Weirの談話を紹介しています。なお、この会社の責任者の談話と製品(52KWh、336ポンド、Li-Ion電池より安価、寿命は無限)のEesu写真を見聞するのは始めて。
Dr.Richard Weirのコメント
●既に認証について発表したように、順調に進展している。
●予定していた2008年後半の生産は、資金が充分でなかったので、間に合わせることが出来なかった。
●Light Electric Vehicles Companyとの契約が出来たので、EEStor社として生産に向かって進展を図ることが可能になった。
(2008.11.10)

追記8:
08年12月16日、EEStor社のEESUの新しい特許が発表されました。これについては、別項で紹介しています。
(2008.12.27)

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GMがプラグインハイブリッド自動車「ボルト」を発表

070107_chevyvolt_widehmedium_12007年1月7日からデトロイトで始まった北米自動車ショーで、ゼネラルモーターズ(GM)が、前からの噂通りプラグインハイブリッド自動車(PHEV)のコンセプト・カーのシボレー・ボルト(Chevrolet Volt)を発表しました。

このボルトは、形式で言うと「シリーズ・ハイブリッド」(series hybrid、serial hybridとも言う)です。この型は、米国で電気自動車ユーザーが遠出をするとき車の後に付けて引っ張るエンジン発電機(航続距離を延ばすのでRange Extenderと呼ばれている)を一体化したものに相当します。(ハイブリッドの形式分類については、ここに解説があります)

このタイプは、車の駆動は全部電気モーターによります。電池の充電電力を使い切ると、ガソリンエンジン発電機が回り始め、この電力がモーターを回します。普通の車のように、エンジン動力を機械的に車輪に伝えることはありません。それ故、ボルトのエンジンは発電専用で、3気筒1リッターの回転数一定のものです。エタノール混合ガソリンE85も使用可能です。

Electricrun_fraction_vs_battery_c_2このタイプは、GMとしては1990年代に出した電気自動車EV1(映画「誰が電気自動車を殺したか?」の主役の車)の経験を生かせる利点があります。ただし、高速走行などのために電池を大きくしないといけないので、初期のPHEVとしては比較的長い航続距離の40マイルにしています。この40マイルという距離は、2006年の大統領一般教書での新エネルギー計画(Advanced Energy Initiative)の発表以来ブッシュ大統領が各所のスピーチでPHEVの話をする時に言及している距離です。なお、航続距離40マイルの電池を積むと、米国の平均的走行パターンの乗用車は充電電力で63%(米国の1995年NPTSデータをもとにした筆者の推定値、左図参照)の距離を走ることが出来、それだけガソリン節減になります。

GMは、PHEVはシリーズハイブリッドと決めた訳ではないようで、Wiredの記事では、GMの役員の「100年も車が石油で走ったのは長過ぎた、変化が必要」「石油の削減は1発の弾丸では無理で、Baskin Robbins(アイスクリーム)のフレーバーの様に何種類もの車型に注目」の言葉を紹介しています。現に、GMは下記の注にあるように、2006年11月のロサンゼルス・オートショーで、2モードハイブリッド車のSaturn Vue Greenlineをベースにしたパラレルハイブリッドのプラグイン車を発売する計画を発表しています。

07volt_graphic_large_1今回のボルトの発表ですが、米国では一部にGMの苦し紛れの"Smoke and Mirror"(煙・鏡などを使ったイルージョン)だと言う批判はありますが、一般に歓迎ムードです。デトロイトのショーに行ってきた人の話では、ボルトはGMの展示の中心に置いてあり、一番人気があったとのこと。Wiredの記事の中にも、"Toyota and Honda, watch out, you can't take beating GM for granted any more." (トヨタとホンダよ、注意せよ、もうGMタタキを当たり前のようには出来ない)とあるように、米国産への期待は大きいようです。このような期待に応えて、2010年前にも出すのではという観測もあります。

シボレー・ボルト コンセプト・カーの主要目

型式: シリーズ・ハイブリッド
充電用エンジン: 3気筒、1リッター
ターボ、一定回転数、E85燃料可
最高速度: 120MPH
電池航続距離: 40マイル
充電時間: 6.5時間
Chevy2bg_1

注: GMは2006年11月末のロスアンゼルス自動車ショーで、サターン・ビュー(Saturn Vue)ハイブリッドのプラグインハイブリッド車の製造計画について発表しました。自動車メーカーでプラグイン車の製造について発表したのはこれが最初ですが、今回のボルトの発表も含めて発売時期は示していません。

追記1:
08年5月、Chevy Voltがいよいよテストトラックと公道での試験を開始しました。担当役員のBob Lutzによると、「電池は最も問題が少なく、工学的チャレンジの大部分はソフトウエア」とのことです。
(08.05.20)

追記2:
08年6月、GMはガソリン価格高騰、トラック・SUVの売行き不振などへの対策を発表しましたが、その一つとしてChevy Voltの生産のための予算を承認しました。2010年末までの市場投入に自信を持っているようです。
(08.06.08)

追記3:
2008年以降の進展「GMがプラグインハイブリッド車Voltの市販バージョンを公開」はここ
(2008.9.20)

追記4:
2010年以降の進展「シリーズ型プラグインハイブリッド車のGM VoltとOpel Amperaにハイブリッド型式変更の噂 追記:やはり噂は本当だった」はここ
(2010.07.03)

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プラグインハイブリッド自動車と夜間電力活用

原子力関係の月刊誌「原子力eye」2007年1月号に「プラグインハイブリッド自動車と夜間電力活用--輸送部門の石油消費削減に向けて」を掲載しました。原稿のPDFファイルはここ

この中で触れていますが、プラグインハイブリッド車の利用の一つ"V2G"も要注目です。

“V2G”とは、Vehicle-to-Grid の略で、自動車からグリッド(電力網)への電力の融通のことを意味します。プラグインハイブリッド車には車を駆動できるほどのパワーのある電池を搭載しているので、駐車中はプラグインして電池をグリッドに接続しておき、グリッド側が必要とする電力の融通サービスを行う仕組みがV2G です。
Vtog_2
今、考えられているV2G のサービスで、具体例について評価・検討が進められているのは
. 電力系統運用に対する調整・非常用電力供給などのサービス
. 風力発電などの変動電源に対する調節機能
. 鉄道などの変動需要に対する調節機能
などです。この辺もやはり米国が大分先行しています。

また、米国防省などが開発支援・出資をしているFirefly社のカーボン・グラファイト・フォームを使用した革新的鉛酸電池に関心を持っています。本格出荷されるのは2007年の後半ですが、Li-Ionのbestとこの鉛酸のbestを比較した結果を見ると、出力密度は100Wh/kg対45Wh/kgでLi-Ionの方が優れていますが、サイクル寿命は両方とも4000で、値段($/UsableKWh)が$800対$250と断然安く、Li-Ionに対する値下げ圧力は相当大きいと思います。

これを書いた後、11月の末にゼネラルモーターズのWagoner会長・CEOがロスアンゼルス・オートショーでSaturn Vueハイブリッドのプラグイン化を発表しました。自動車メーカーでPHEVの製造計画を発表したのはこのGMが最初ですが、「何時」とは言っていません。また、日産も12月にプレス発表した「日産グリーンプログラム2010」のコア技術開発強化のアクションとして、PHEVの開発加速を挙げています。

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