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2003年12月

海外学会の印象

ANSの理事を務めて

ANSlogo
私は1996年から99年の3年間、米国原子力学会(ANS)の理事を務め、またここ数年、国際原子力学会協議会環太平洋原子力協議会などにも関係してきたので、これらの経験から学会運営に関して印象に残った点を述べる。

ANSの規模 ANSの会員数は最大時の1万7千名から減少して現在1万2千名位であるが、会員数約8千名の日本原子力学会と比較するとその人数の差以上に規模が違う印象を持つ。ANSには20部会、18委員会、9特別委員会、52国内支部、9外国支部、23プラント支部がある。支部は独自に会員を有して運営しており、そのような支部のみの会員の数は上記会員数に含まれていない。ANSの本部はシカゴ空港から車で30分くらい、アルゴンヌ国立研究所とも20分くらいのところにある。ANSの設立は1954年で、20年位前から現在の場所を本部としている。建物は元小学校で、2階建延べ700坪以上の広さがある。職員は現在約50人。

ManagementとGovernance ANSのManagement(運営)は、学術的には部会が、会議などは支部が、調整、立案は委員会が行っている。BoardDifference
例えば、年会やトピカルミーティングはプログラム委員会が調整して、企画、運営は支部や部会が行っている。理事会の役目はGovernance(組織統治)で、学会の基本方針、活動方針、予算、規約などの審議が主である。理事・役員の選出では、先ず指名委員会が候補者を推薦する。原則として、副会長(次期会長)、理事などの役職の各定数以上の人数を候補者として推薦する。これに、一定数の署名を集めた自薦候補が加わり、全会員の郵送投票で決める。年齢などに関係なく、やる気のある人は支持を得て理事や会長になる。

RuleOrder
会議の進め方 理事会は年に2回の年会の期間中に1日半ほど開かれる。会議の進行方法は規則(Rules of Order)で定められており、議事説明、質問、動議、討論、採決と型通りに進められる。審議事項については、発声、挙手、あるいは投票により、必ず採決しその結果を議事録に記録する。ちなみに、国際的な集まりでの会議の進め方には議長のお国柄が出る。北米が議長のときは多数決方式で決めていく。日本人が議長の場合は議長主導でコンセンサスにもっていく。欧州の議長はその中間という感じである。われわれにはコンセンサス方式がなじむが、多数決方式は議論に決着がつくので、例えば学会としての見解、声明を出すときなど、結論に到達し得る良さがある。

交流機会としての年会 ANSの年会は年2回、6月と11月に、ホテル、コンベンションセンターなどで開催される。米国は地理的関係で通常は集まり難いので、委員会も部会も年会の機会に会合を開く。これらの会合予定は、年会プログラムに記載されているだけでも100を超える。これが発表プログラムと平行して開かれるので、会議室を多数必要とし、また時間のやりくりも大変である。早いのは朝7時からパン、コーヒーを食べながらの会議になる。忙しい人は部分出席の連続である。夜は会員親睦の催し物があるので、年2回の年会の機会には密度の濃い交流が図れる。年会以外に急ぎの審議が必要な時には、電話会議(Telecon)も用いられる。私が参加した10人くらいの委員会では、参加率の良い夕方に会議を開催し、約1時間の会議時間で面談と遜色ない審議を行っていた。この場合も、会議は型に従って採決しながら進められる。

見解の公表、政策への提言 ANSは以前から原子力に関する重要な問題について、原子力の専門家としての見解、所信を声明、意見などの形で公表、提言してきている。最近は、食品照射の安全性、低レベル放射線の健康影響、などに関する声明を発表している。また、PCAST(科学技術大統領諮問委員会)のエネルギー研究開発パネルや、エネルギ-省のCNES(総合国家エネルギー戦略)への意見陳述、NERI(原子力研究開発イニシャティブ)への協力など、政策面でも積極的に行動してきている。ANSのワシントン事務所は、政策立案に関する情報収集・提示に努めている。そのほか、気候変動枠組み条約会議には、京都のCOP-3、ブエノスアイレスのCOP-4へ、ANSは代表を派遣している。

以上は私のANSとの係わりで印象に残った点である。日本原子力学会はANSなど海外学会と協定を締結して本格的な協力を開始している。学会の特色を生かしたより積極的な今後の国際活動に期待するものである。

堀 雅夫 学会誌の巻頭言への寄稿 1999年9月

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Technologically Correct

{Technologically Correct, TC = 技術的に正しい}

技術者は"Technologically Correct"な判断・発言をすることが、その倫理的な役割であると考える。

pcbedtim"Politically correct"、略してPC、という言葉がある。「政治的に正しい」という意味で、民主主義社会においては、「社会的に正しい」と時間差がある場合もあるが、ほぼ同じと考えても良い。例えば、人種差別は良くない、性差別は良くないなどは、現代社会においてはPCになっている。米国では昔のお砥ぎ話をこの現代のPCに則って多少皮肉混じりで見直したものを"PC Bedtime Story"として出版されている。

PCをもじって、"Biologically correct"、略してBCという造語が竹内久美子著の「BC!な話」(新潮社、1997年)で使われている。これはPCとは独立に、例えば性によるいろいろな違いを生物学的に淡々と説明しようというものである。同様に"Scientifically correct"(SC)、"Technologically correct"(TC)、すなわち「科学的に、技術的に正しい」という言葉を使うことが出来よう。これは、ある事柄に関して科学的、技術的な事実・知見と最善の推量に基づく見解のことを言うこととし、その時々に形成される社会のその事柄に関する理解とは独立なものである。

PC、すなわち社会的な正しさは、BCやSCやTCなどの多くの正しさを総合して形成されるのが社会にとって望ましいとすると、科学技術に携わるものは、SC、TCをPCに適切に含めるべく発言することが要請される。

とくに、科学・技術が関係した規制や事故対応などの場合で見ると、専門家によるSC、TCのタイミング良い提示の必要性を感じる。科学・技術による人工物が社会・公衆へ与える環境、健康など安全上の影響について、科学的・技術的な事実・知見に基づいた的確な判断とタイムリーな発言があれば、本来採られるべき処置が採られ、社会にとって無駄な損失が防げたと思える場合が多いからである。例えば規制や事故対応で言うと、当該の企業、監督する官庁、判断する委員会など関与する各機関・各段階において、技術的判断に基づく責任者の判断とその発言が重要である。また学会のような中立的で権威ある専門家による見解の発信も重要である。

Technologically Correct な判断がPolitically Correctと異なっているときは、一般の風潮に逆らう発言を敢えてすることは、とくに事故時などではその当事者にとっては、実際にはかなり難しい。しかし、その時は「責任逃れ」、「社会性がない」、「非現実的」などと社会やマスコミ、あるいは業界の非難を浴びようとも、Technologically Correct な判断、発言を敢えてするべきである。Technologically Correctな判断、発言は、より正しいPolitically Correctの形成に役立ち、結局は社会に貢献するものである。

技術者は、常にTechnologically Correctな判断、発言をすることが、その倫理的役割であると信じて信念を持って行動するべきと考える。

堀 雅夫 技術者倫理に関する研究会の報告書に寄稿 2002年1月

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技術のロックイン

QWERTY vs. Dvorak

私は英文タイプライターを使用していた1960年頃から、「ドボラック」というキー配列を使用してきた。この配列は米国のDvorak氏が1932年に考案したものである。当時のタイプライターも今のパソコンのキーボードも、左手の上段のキー配列から「QWERTY」配列と呼ばれているものを大部分の人は使用しているが、この配列は使用頻度の多いキーの多くがホームポジションから離れていて、インプットの効率化を考えて作られたものではない。

dvo-key1
ドボラック配列では、左手のホームポジションにAOEUIと母音があり、右手のホームポジションには使用頻度の多い子音が配置されている。英語を打つ時の比較では、ドボラック配列では、タイプミスは半分、速度は2倍、運指距離は20分の1になると言われている。日本語は子音の後に母音を伴うため、ドボラックの左右交互打鍵の特長が発揮され、日本語のローマ字入力においても効率的に楽にタイプができる。

ウインドウズやマックでは、今はソフトで切り替えるだけでキーボードを変えなくても両方式を使用できるが、ドボラックの利用者は米国でも日本でも非常に少ない。このキー配列方式は、ビデオレコーダーのVHS対ベータとともに、「技術のロックイン」の例としてよく引き合いに出される。すなわち、一旦ある技術が広く利用されると、ネットワーク外部性が強い場合は、より良い新技術があるにもかかわらず旧技術からの移行が起きない。

最近はパソコンのパーソナル化と可搬化が進んで、キーボードに関しては各人が自分のお好みの方式を使用できる環境が整ってきた。

さて、エネルギー技術の場合はどうなのか? ロックインした技術から新しい技術へ移行させるには、慣習や規格や制度に打ち克つ技術の卓越さは勿論だが、開発者や評価者がそのベネフィットを社会へ粘り強くアピールしていくことが重要であろう。

堀 雅夫 「エネルギーレビュー」 2003年3月号 随筆

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情報化とKnowledge Cluster

技術情報流通の変化

最近、海外からの技術情報の入手の仕方が様変わりしているのを実感している。インターネット経由での入手が格段に多くなっている。組織が運営しているメーリングリストや、自然発生的なメーリングリストから、生の情報が速く届く。検索サイトを利用すれば、必要な情報は容易に探せる。Google.comのような検索サイトは世界中のウェブ(WWW)ページを全文検索しているので、欲しい情報がインターネットに存在しさえすれば、それを探し出すことが出来る。

多くの研究者は自分の発表したペーパーはより多くの人に読んで欲しいと考えており、学会や雑誌で発表するのみでなく、所属組織のサイトや自前のサイトを利用して、インターネットに公開するようになってきた。また、論文の存在が判れば、インターネットに出てなくても著者宛に請求すれば直にペーパーをメール添付で送ってくれる。私自身も発表したペーパーをインターネットで公開している。これらのディジタル情報は、二次加工が便利で、整理、保存も楽というメリットもある。

情報化と産業のクラスター

deathdistance数年前に英エコノミスト誌は、インターネットなどの情報流通手段の発展と世界規模での普及で距離という物理的制約がなくなる、いわゆる「距離の死」、という現象を予測して話題になった。確かに、企業は世界最適立地を指向してグローバルに展開し、分散する傾向が進んでいる。しかし、一方で特定の地域に特定産業が地理的に集中(クラスター)する現象が生じている。先端情報産業ではカリフォルニアのシリコンバレー、インターネット関連ではニューヨークのシリコンアレー、東京では渋谷のビットバレーなどがその典型的な例である。コンテンツ作成などでは、顧客との接触の便のため大都市立地が有利になる。人が近接すれば生じる「競争と協調」の効果を利用できる。人間的な接触はまた、通信による情報の流通をスムースにする。関連サービス業も効率化する。このように、クラスターにより生産性が高められるのである。

学術的情報の交流

昨年の米国原子力学会年会の「学会間の情報交流に関するパネル」で筆者はパネリストとして、これからの学会間の情報交流の重要な手段として次の三つを挙げた。
1. 会合機会による交流:良い企画の国際会議は最も効果的な情報交流の方法
2. インターネットを通じての交流:メールとウェブを組み合わせたサービスは時間とコストの点で最も効率的な方法
3. 国際的グループによる交流:国際原子力学会協議会のタスクグループやワークショップなどの国際的グループによる検討は意見・見解の交流に貢献

インターネットを利用した学術情報の配布には、日本原子力学会は積極的である。学術的会合の案内やその他の情報を会員にメールで頻繁に配布している。今までの学会誌での通知に比べてはるかに多くて速く、また学会誌ではこれまで扱えなかった種類の情報が含まれている。最近は、英文論文誌の掲載論文を発行と同時にウェブで公開することにした。論文購読の契約数への悪影響を心配する向きもあるが、ハードコピーの発行部数の制約を超えてより広い範囲に学術情報を伝達できる点で、結果的に学会と発表者のステータス向上に繋がりうる英断と言えよう。あとは論文の内容次第である。

インターネットなどの情報伝達の手段が発達して来ても、会合・会議など人の集まる機会の必要性、重要性は減ってはいない。学会の会合を通しての交流では、欧米の学会の企画力は優れている。魅力ある分野・テーマの国際会議シリーズをつくる。評判が良ければブランド化して、安定した参加者が得られる。学術的な発表のほかに、参加者の親睦の催し物を企画し密度の濃い交流機会を提供する。

会合・会議の性格、内容は今後変っていくと考えられる。これからの会合・会議では、他の情報伝達手段では出来ない、人と人が会わなければ出来ないセッション、イベントに重心が移っていくのではないか。会合・会議では、参加者同士がお互いに人間的に知り合い、信頼を高める機会を提供することが増えていくのではないか。人間的に知り合ってこそまた、インターネットなどによる情報伝達もスムースにいくものである。

Knowledge Cluster

“Knowledge cluster”という言葉がある。知識のcoherent grouping(一貫性のあるグループ化)に関することを総称して、そのための技術、手法から、教育カリキュラム、研究学園都市のような設備までを含んでいる。clusterという言葉には、related but differentと言う意味合いがある。関係しているが、異なった、知識(人)を束ねて、より高い知識を創出する方法、技術、活動と解釈している。

最近、筆者が設立に関係した原子力による水素生産の研究会は、その目的はこのKnowledge clusterである。原子力による水素生産は、水や化石燃料を原料とし、電気、熱などのエネルギーを原子力により供給することで、水素生産に伴う炭酸ガスの排出を抑制する方法である。そのため関係している技術分野は広い。原子力はもとより、電機、化学、石油、電力、ガス、鉄鋼、建設などの業種が参加している。まさに、関係しているが、異なっている知識を束ねることになる。この研究会は定期的会合における講演・討論による情報交流と、その間のインターネットベースの情報交流を組み合わせている。配布資料、参考資料などはファイルサーバーに保管しておき、会員はそこからダウンロードして利用する。会員間の連絡・討論にはメーリングリストが使用されている。これにより、短期間に密な情報交流が可能になる。

日本は人口密集度が高いので、地理的条件として、例えば米国と比較して、格段にクラスターに有利である。原子力研究開発の分野でこの利点を活用した活力のあるクラスターが育つことを期待したい。

(堀 雅夫 原子力システムニュース Vol.12, No.1, 2001.6 巻頭言)

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ウェブログを始めました

Pasocons
2003年12月17日、今日からこのウェブログを始めます。

ウェブログ(Weblog)については、1年位前から関心を持ってました。30年来趣味で持っている車フェアレディ・ロードスタークラブのホームページ作りに始まり、現在はプライベートのホームページや関係している国際団体のホームページなどのWebmaster をしていて、そのサイトの更新の際にコンテンツを作るのは良いとして、時間のかかるデザインやHTMLソース作成の効率化、過去の記事のデータベース化を図らねばと考えていたからです。

2,3日前に、平田太治著の「Movable Typeで今すぐできるウェブログ入門」(2003年8月発行)を読んでウェブログの進展を知り、ホームページの更新とその記事のデータベース化が容易に出来るこの方式を早速トライすることにしました。

私の自宅サーバーは現在古いマックを使って運用しているので、これにMovable Typeをインストールするのは後回しにして、とりあえずNiftyが最近始めたウェブログ・サービスの「ココログ」を利用することにしました。早速、一時休会していたNiftyの利用再開の手続きをして、このココログのサイトを開きました。ウェブログに習熟したら、自前のサーバーでウェブログを運用したり、私の他のホームページにも適用したいと思ってます。

ここには、これまで自分が考えたり、書いたりしてきたものを、纏めたり、再録して、同時にデータベース化していけたらと考えています。再録に際しては、インターネットの特長をフルに利用して、参考になる他のサイトへのリンクを付けるなど編集をすることにします。

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